2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730089
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
坂口 甲 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (20508402)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 履行不能法 / ドイツ法 |
Research Abstract |
2013年度は、賃約(locatio conductio)に関する学説彙纂19巻2章の翻訳を継続したほか、民法536条2項の母法であるドイツ民法326条2項の起草過程を解明する作業を行った。18世紀の自然法においては、後発的不能に関する法準則はまだ十分に形成されていなかった。債務者は物の滅失(interitus rei)によって債務から解放され、物の滅失が事変(casus)によるときは、債務者は損害賠償責任を負わないとされた。つまり、債権者が給付危険を負う。対価危険については、事変によって惹起された損害をだれが負担するのかという形で議論され、売買では債権者が危険を負担し、賃約(locatio conductio)では債務者が危険を負担するという議論が展開された。これらの給付障害法準則を不能要件を中心軸として組み立てたのがプロイセン一般ラント法である。同法が物の滅失ではなく、不能に中心的地位を与えたのは、同法が為す債務の執行可能性を初めて現実化したからである。つまり、同法以前は、為す債務の執行可能性がなかったので、履行できない債務者を為す債務から解放する準則は必要なかった。その後、不能法に強い影響を与えたのがモムゼンである。彼によれば、債権者の不協力による不能は、事実上の不能と法的不能とに分けられ、事実上の不能では、債務者の履行不能ではなく債権者の受領不能が吟味される。ドレスデン草案の審議過程でも同様の議論が行われた。しかし、事実上の不能に関する準則は賃約に関する各論の規定に委ねられ、債権総論には、プロイセン一般ラント法以来の債権者の過失による不能に関する準則のみが残されることになった。このように、まず、不能を中心とする給付障害法が19世紀に形成され、次に、債権者の不協力による不能が二分され、一方が債権総論に他方が債権各論に規律される形で、ドイツ民法326条2項は成立した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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