2010 Fiscal Year Annual Research Report
企業活動におけるリスクマネジメントと取締役の法的責任
Project/Area Number |
22730090
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
南 健悟 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (70556844)
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Keywords | 取締役の責任 / リスクマネジメント / リスク管理 / 企業不祥事 / 法令遵守体制 / 内部統制システム / アメリカ法 |
Research Abstract |
今年度は、企業活動におけるリスクマネジメントの中でも、特に、法的リスク(コンプライアンスリスク)に対する取締役の責任について検討を行った。法的リスクと取締役の責任についての総合的な研究は「企業不祥事と取締役の民事責任(一)~(四・未完)」で論じた。同研究では、取締役の法令遵守体制構築義務の歴史的展開と近時の取締役の誠実義務論との関係を検討し、最終的には法令遵守体制構築義務に加えリスク発生後の対応を中心とした義務(Red Flag対処義務)をより強調することで、責任範囲の明確化が図られるとした。また、法的リスクの中でもより具体的な労働法違反リスクとの関係について、労働者に対する取締役の法的責任を「取締役の労働者に対する損害賠償責任」において検討した。 他方で、法的リスク以外のリスク、特にサブプライムローン市場への参入と、そのビジネスリスクの管理と取締役の責任との関係をアメリカ法における近時の2つの裁判例(AIG事件判決、Citigroup事件判決)を素材にし、基礎的考察を行った(「リスク管理と取締役の責任」)。アメリカ法においては、法的リスクとそれ以外のリスクとを区別し、それに対する管理についての取締役の責任論が異なることを明らかにした。法的リスクについては法令遵守体制構築義務(内部統制システム構築義務)の問題として、それ以外のリスクについては管理方法について経営判断原則が適用されることを示した。日本法では、いずれのリスクについても一律に内部統制システム構築義務の問題として扱われる傾向にあるが、その傾向への再考を促す一端といえよう。 最後に、企業活動のうち海上運送にかかるリスクについては、共同海損に関する裁判例の検討を行った(「商事判例研究」)。
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