2012 Fiscal Year Annual Research Report
企業活動におけるリスクマネジメントと取締役の法的責任
Project/Area Number |
22730090
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
南 健悟 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (70556844)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | リスクマネジメント / リスク管理 / 取締役の責任 / 内部統制システム / 法令遵守体制 / コンプライアンス / コーポレート・ガバナンス |
Research Abstract |
平成24年度は、企業に生じるリスクについてどのような法的問題があるのかということを中心に検討した。また、引き続き、平成23年度以前に検証した企業の法的リスク以外のリスクについてどのようなものがあるのか、そして、リスク管理に伴う取締役の責任のあり方について考察した。 現段階においては、明確な結論までは導くことができていないが、海外における資料収集も行い、海外とりわけアメリカやヨーロッパにおいて金融危機とコーポレート・ガバナンスに関する考察がなされていることを確認した。それらの多くは、サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機に対応するコーポレート・ガバナンスのあり方について検討したものである。これらの研究は、以前検討した法的リスク以外の企業リスク、特に市場リスクに対応するガバナンスについて考察したものであったが、これらの研究は取締役の責任を検討するに当たっても重要であることがわかった。ただし、アメリカにおける法的リスク以外のリスク管理に伴う取締役の責任については肯定された事例がほとんどないことが判明したが、それは取締役の責任を厳格にすることによってのみ、取締役に優れたリスク管理を行わせているわけではないと思われる。すなわち、リスク管理にとって重要な内部統制システム構築についても当該義務違反によって、取締役のリスク管理にかかわる規律を強化するものではないのではないか、と考えられる。そうすると、リスク管理にとって重要な内部統制システムの構築を取締役の責任による規律だけではなく、他の手段によって規律を図っているのではないかとの推測するに至った。したがって、最終年度は、この推測の検証と平成24年度までの研究成果を公表することが目標となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、アメリカにおける資料収集を行うことで、いくつかの検討の素材を手に入れることができたこと、第二に、日本法における取締役の責任についての考察も会社に対する責任だけではなく、第三者に対する責任も含めて包括的な検討を行っており、企業リスク特に法的リスクに関する問題については一つの方向性が定まりつつあるからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの本研究課題についての考察については、次の点が明らかになりつつあると思われる。すなわち、第一に、企業リスクのうち法的リスク(コンプライアンスリスク)についての取締役の責任に関連して、いわゆる法令遵守体制の構築義務については、アメリカ法においては広く裁量が認められており、そのことは日本法でも妥当するすること。第二に、法的リスク以外の企業リスク、例えば、市場リスク等について、リスク管理に係る取締役の責任については法令遵守体制構築義務と同様に広い裁量が認められていること。そして、その広い裁量が認められる根拠として、裁判所の審査能力や取締役のリスク回避的な経営の防止といったある種の政策が背景して存在することがアメリカ法との比較検討によって明らかになった。また、実際にリスクが発生した場合には、当該リスクにどのような対処を行ったのかという観点から、裁判所による審査が行われていることも判明した。 以上のことを踏まえて、今後の研究の推進方策についてである。まず、以上の考察からすると、リスク管理にとって重要な内部統制システムの構築については、単に取締役の責任を厳格化することによって規律を図っているわけではないということが推測されるため、取締役の責任以外による規律の方法について検証することが今後の課題である。とりわけディスクロージャー制度との関係を考察する必要があるように思われる。この課題は必ずしも研究計画の変更をもたらすものではなく、より優れたリスク管理体制(内部統制システム)をどのように構築するのかという点では従来の研究計画に沿うものである。なお、平成25年度は本研究課題の最終年度でもあり、本研究課題について一定の結論を導き、最終的な研究成果を公表することが目標となる。
|
Research Products
(5 results)