2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22730092
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
水津 太郎 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (00433730)
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Keywords | 民事法学 / 物権債権峻別 |
Research Abstract |
本年度はまず第一に、物権と債権の峻別の意義につき、原理の問題ではなく、法典の編成方式、すなわち法典の編別上両者を峻別することの意味を探るため、その基礎研究として、現代ドイツの法典論の動向をフォローした。具体的には、「脱法典化」(イリティ)の現象を受け、1970年代ごろに主張された、キュブラーとエッサーを代表とする「法典悲観主義」、これに対する反論、とりわけその中心に位置したマイヤー・マリーとK・シュミットによるもの、そして、ツィンマーマンをはじめとする、法典にはなお擁護すべき価値があるとみる現在の論客の考え方を分析・検討した。第二に、物権債権峻別の限界の問題との関係で、この問題を捉える視点、枠組みを構築するために、基礎的作業として、以下の議論の状況を概観した。物概念の拡張論、これを肯定するギールケ、ヴィアッカー、我妻などの主張と、これに対する通説の立場、近年ではビドリンスキーの論文を取り上げ、また、権利論の限界をめぐって、原島・ライザーなどの構想を、昨年度考察したポイケルトの構想と接続させることを試み、さらに、ゾームとビンダーの論争を起点とする「対象」論、なかでもラーレンツの三類型論に注目しつつ、この議論を、以前に考察した「帰属」論の問題構造と対比・分析した。同じく「限界」の問題に属するものとして、第三に、いわゆる「格下げ」問題との関連で興味深い、ドイツにおける家財道具の物上代位規定の成立・削除をめぐる問題を考察した。ただし、細密に検証しえたのは、ザクセンシュピーゲル法・プロイセン一般ラント法から、ドイツ民法典の立法過程を経て、男女同権法により剰余共同制が導入される前までの状況、つまり管理共同制において同規定が果たしていた意義までである。そのほかとくに、物権変動にはみられない債権譲渡固有の問題である、第三債務者保護のあり方を、比較法・解釈学的視座から構造化することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に取り組むなかで、研究の目的を達成するためには当初は予想していなかった諸問題、なかでもとりわけ、法典論・外的体系論に正面から取り組まなければならないことが明らかになったため、研究の進捗はいちおう順調ではあるが、しかしあくまでおおむね順調としかいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として、物権債権峻別の意義と限界につき、細かな、派生的な問題群よりも、より基礎的な問題と、既存の諸問題を構造化し、新たな問題を発見・解決できるような視点の析出、枠組みの構築に重点をおいて取り組むこととする。これによって、本研究の目的をより効果的に実現することが可能になるものと思われる。当初は予想していなかった諸問題のうち、とくに重要な法典論・外的体系論については、基礎的な問題に属するので、研究計画に取り込み、次年度も引き続き考察をくわえることとする。
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