2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730115
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上川 龍之進 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (40346656)
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Keywords | 金融危機 / バブル / 小泉改革 / 不良債権 / 中央銀行 / 政策決定過程 / 金融政策 / 比較政治経済 |
Research Abstract |
本年度は、日米両国の金融危機への政策対応を比較分析するための分析手法の構築と、日本の金融危機への政策対応の分析において一定の成果をあげた。またアメリカをはじめとした欧米諸国の金融危機への政策対応について、理解を深めた。 第一に、政治アクターの利益と政治制度に着目して政策決定過程を分析する合理的選択制度論の枠組みに、政治アクターの政策理念という説明要因を付け加えることで、より現実の政策決定過程を説明するのに適した分析枠組みを構築し、それを用いて小泉政権期の経済政策決定過程を分析することで、その枠組みの有効性を示した。その成果は『小泉改革の政治学』として公刊した。この枠組みは、日米を比較する本研究にも適用可能であると考えられる。 第二に、『小泉改革の政治学』および"Economic Policy Recommendations and Economic Policy of the Koizumi Administration"において、小泉政権の金融危機への政策対応を検討し、長期間にわたり先送りされてきた不良債権問題がいかにして解決されたのかを説明した。この作業により、金融危機を解決するためにいかなる政策対応が必要とされるのか、そうした政策対応がとられにくい理由は何かが、明らかにされた。 第三に、2007年以降の世界金融危機への先進諸国の政策対応を比較する国際共同研究に参加した。私は日本を担当し、戦後から現在までの金融行政の変遷をたどりつつ、欧米諸国との比較の観点から検討を行った。10月にカナダで行われた研究会にて、この研究の報告を行っており、現在、論文として公刊するため修正を行っている。この共同研究を通じて、金融危機の比較分析の枠組みを構築するとともに、アメリカをはじめとした先進諸国の金融危機への政策対応について理解を深めることができた。
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