2011 Fiscal Year Annual Research Report
日常生活に食い込む政治:職場と地域におけるソヴェト民主主義と家族
Project/Area Number |
22730124
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河本 和子 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (50376399)
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Keywords | 政治学 / 民主主義理論 / ソ連・ロシア史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、規範として公私の区分を要しないソヴェト民主主義体制下で、実際のところ公私がどのように存在していたのか、していなかったのかを探ることにある。分析の対象は同志裁判所である。同志裁判所は、職場や住域で労働規律違反や住民同士の紛争処理などにあたった社会団体であり、1950年代の末から活発に利用された。背景には、フルシチョフ政権が目指した共産主義社会建設がある。共産主義社会が到来すれば国家は消滅すると考えられたため、社会団体は将来に向かって国家の機能を引き受けていくものと想定されていた。 2011年度の研究として、第一に、モスクワ市公文書館で資料収集にあたった。ここでは、ある工場の同志裁判所に関する資料を閲覧した。この工場での同志裁判はもっぱら労働規律違反を問うものであるが、中には窃盗や路上での乱暴狼籍などの犯罪も初犯であれば含まれた。また、工場が所有する寮での喧嘩や、従業員の家庭内トラブルも扱われていた。特徴的なのは、いずれの類型の紛争も、概ね飲酒がからんでいるということだった。そのほか、労働組合の資料を閲覧し、同志裁判所が従業員の私生活に踏み込めるか否かという観点から重要な議論を発見した。結論として、私生活かどうかが同志裁判所の管轄を決めるのではなく、裁かれる人の身分が工場や企業に所属しているか否かが鍵となっていた。すなわち、従業員であれば、私生活であろうが工場での問題であろうが、同志裁判所で審議すべきだと広く考えられていた。第二に、ロシア国立図書館で資料収集を昨年に引き続き行った。昨年の調査よりも範囲を広げて文献収集に当たった。 これらの調査から得た知見を元に、昨年度に行った学会報告のために準備したペーパーを改稿し、論文として『ロシア史研究』に投稿した。論文はアクセプトされ、2012年1月に掲載された。
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Research Products
(1 results)