2012 Fiscal Year Annual Research Report
韓国における福祉国化のメカニズム――大統領制のインパクト
Project/Area Number |
22730126
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金 淳和 早稲田大学, アジア研究機構, 招聘研究員 (00409567)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 韓国 / 福祉政治 / 市民立法 / 大統領制 |
Research Abstract |
本研究は、グローバル化の中の韓国の福祉国家化の政治的メカニズムを解明することで、西欧の先進工業諸国の経験にもとづく比較福祉政治研究に新しい視座を提供することを目指した。そのために、金大中政権の福祉拡充の政治過程(年金改革、医療保険の統合、公的扶助改革)の実証分析を行ってきた。最終年度の2012年度は、大統領と市民団体を中心とする福祉連合がいかにして形成されたのかという点に加え、大統領の政策統制力へのIMF経済危機の影響や、福祉国家の削減・再編圧力の影響などに焦点をあてて分析を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 韓国では、福祉国家推進勢力である左派政党とそれを支持する強力な労働組合が存在していなかった。さらに、一連の改革では、社会的弱者に社会的保護を拡大するため、制度を支えるコストを大企業と大企業労働者に転嫁し、政府の財政支出を増加させる懸念から、強力な反対勢力が存在していた。また、福祉国家の削減・再編圧力が福祉国家形成を制約する要因となった。それにもかかわらず一連の改革が実現したのは、大統領と市民団体が結びついたことで、労働勢力と連帯し社会福祉運動を推進してきた市民団体が、効果的に左派政党の役割を代替しえたことによる。大統領と市民団体のゆるやかな福祉連合は、親福祉的大統領の登場に加え、選挙への配慮や、反対勢力を突破する戦略との関連でもたらされた。市民団体にとっては、最終的な政策決定権をもち、IMF経済危機の危機管理者として自律性を高めていた大統領との連合形成が、立法運動を有利に展開する重要な要因となった。韓国で、大統領制に固有の機能は、西欧諸国の福祉政治とは異なるあり方で利益を組織化する制度的要因となった。政治の「大統領制化」の議論を考える時、韓国の経験は、西欧諸国と異なる条件および時代背景下の福祉国家形成の政治の一つのパターンとしての意味をもちうると考える。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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