2011 Fiscal Year Annual Research Report
初期アジア主義に関する研究 ―明治日本の興亜論と近代中国―
Project/Area Number |
22730130
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
薄 培林 関西大学, 東西学術研究所, 研究員 (40404024)
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Keywords | 興亜論 / アジア主義 / 中国近代新聞 / 明治の漢学者 / 『字林滬報』 / 李平書 / 姚文棟 / 琉球問題 |
Research Abstract |
本研究は、初期段階のアジア主義、即ち20世紀に現れたさまざまな東アジア地域主義論・大アジア主義思潮の祖型となる明治期の興亜論について批判的に再検討するものである。興亜論とは、近代以来の「西力東漸」の歴史的脈絡の中で、日本と清朝中国の提携を中心にしてアジア各国を団結させ、アジア全体の振興を目指して欧米のアジア侵略に抵抗しようとする動きと思想であり、20世紀の「アジア主義」、「大アジア主義」、戦中戦間期の「東亜協同体論」・大東亜共栄圏構想といった東アジアの地域主義論と思想的につながっている。明治13年に成立した興亜会はアジア諸国にも興亜主義を宣伝し、中国人や韓国人などの外国人会員も吸収していた。このような興亜論の位置づけについて、現在の学界では、興亜論を初期アジア主義として、ある程度肯定的に評価する研究もあれば、全く反対な立場から、初期アジア主義の存在自体を否定し、興亜論を否定的に捉える研究もある。即ち、興亜論の位置づけをめぐってまだ争点が残っている。そのため、興亜論の性質について、いわゆる「アジア主義の二重性」という問題と関連させて再検討する必要があると思われる。そこで本研究はまず、明治日本に現れたさまざまな興亜論を分析・整理することによって、その諸相を明らかにする。さらに「アジア主義の二重性」という問題と関連させて、明治期の興亜論の性質と位置づけを問い直す。その次、明治日本の興亜論と近代中国との関連を考察して、当時中国による興亜言説が如何なるものであるか、この時期の日中両国における興亜理念はどう違うか、中国側は日本の興亜論に呼応できなかった原因は何か、といった問題を解析する。そこでの研究成果を踏まえながら、21世紀の日中協同関係構築に向けたVisionないしは理論的展望を提示することが本研究の最終目的及び意義の所在である。 具体的に今年度は、日本側による興亜論の分析という去年の作業を踏まえて、中国側から見た興亜論と中国知識人による興亜論的言説について考察した。まず、近代中国のジャーナリズムにおける興亜論については、『申報』『循環日報』『中西聞見録』『字林滬報』などの近代新聞に現れた関連記事を網羅的に収集して分析した。その次、黄遵憲・黎庶昌・王韜、姚文棟、李平書などをはじめとする清朝の官僚・知識人による興亜論を解析した。最後に、これらの考察を土台にして、日中両国における興亜理念を比較的に検討し、両者の理念の相違について思索した。
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Research Products
(2 results)