2011 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ドイツ自由主義の政治構想:主権概念の定位をめぐる知的格闘の系譜
Project/Area Number |
22730131
|
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 准教授 (30374177)
|
Keywords | ドイツ政治思想史 / ドイツ公法史 / 連邦国家 / ドイツ自由主義 / ギールケ / プロイス / ベーゼラー / 主権 |
Research Abstract |
本年度は、ヴァイマル憲法の起草者であるフーゴー・プロイス(1860-1925)の重層的な政治秩序構想を、その師であるオットー・ギールケ(1841-1921)の国家論との対比において究明する作業に注力するとともに、ギールケの国家論とその論敵であったパウル・ラーバント(1838-1918)の国家論について、両者の対立点とその論争過程を改めて整理した。 前者の作業の成果として、プロイスの政治秩序構想を踏まえ、ヴァイマル憲法における直接公選大統領制導入の経緯と意図について知見を取り纏め、政治思想学会で口頭発表を行った。本報告内容については、来年度の『政治思想研究』巻頭特集論文の一つとして、公刊の予定である。 後者の作業の成果として、ギールケとラーバントの間で展開された連邦国家論争を中心に、第二帝政創立期ドイツの秩序構想について論文を執筆し、『ジュリスト』上で公表した。 本年度後期からは、フランクフルトのマックス・プランク・ヨーロッパ法史研究所に本拠を置いて在外研究を行い、ミヒャエル・シュトライス教授をはじめとする研究所メンバーと積極的な意見交換を行うとともに、継続的な史料収集活動に従事している。また、ハンブルク大学のレプゲン教授が編集する論文集への独語寄稿論文や社会思想史学会から依頼された書評論文についても、執筆を進めている。さらに、フランクフルト大学で開催されたサヴィニー没後150周年記念の国際研究集会に招待されて参加した他、シュトライス教授のOberseminarやフランクフルト大学との合同Seminar、研究所の月曜定例研究会にもほぼ毎回参加し、最新の研究動向の把握に努めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロイスの政治構想とプロイスが起草したヴァイマル憲法の関係について、知見を取り纏めることができた。これまでのところ、政治思想学会における口頭発表の他、校正中のものも含めて、ドイツで出版される論文集への独語寄稿論文および査読つき雑誌論文2本、紀要論文1本、学会からの依頼による書評論文1本を取り纏めるなど、研究成果の公表にも努めており、研究は順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで取り組んできた研究の中で、政治共同体としてのゲマインデおよび国家、帝国とそれ以外の団体との区別、およびゲマインデと国家の概念的区別をめぐるプロイスの主張を、より精密に分析する必要を痛感している。そのため場合によっては、当初予定していたベーゼラーについて、ドイツ本国における研究状況の整理にとどめ、プロイスの主張の分析に主力を注ぐ選択も考えられる。
|