2010 Fiscal Year Annual Research Report
1930年代日本の国際秩序論の「社会外交史」的研究
Project/Area Number |
22730140
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
酒井 一臣 京都橘大学, 文学部, 助教 (10467516)
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Keywords | 社会外交史 / 文明国標準 / 外交の民主化 |
Research Abstract |
今年度は、研究計画の初年度として、主として、関係文献の収集、及びこれからの研究の方向性を示す論文執筆を行った。 関係文献の収集については、戦間期から第二次大戦期の政治・外交関係の書籍を購読した。また、明治期の文明国標準のありようをさぐるための基本的史料として、『明治天皇紀』などを購入した。さらに、外交史料館で共栄圏構想に関係する未公刊史料を閲覧した。1920年代の『外交時報』『中央公論』を中心に、外交、国際情勢に関する評論を幅広く収集し分析した。 この研究の目的一つは、1920~30年代の国際情勢の変化と日本社会の変化の関係をさぐること(社会外交史)であるが、その最初のてがかりを、民主化の進展と外交政策の関係においた。そこで、この研究の方向性を示す意味合いを込めて、1920年代後半にさかんに唱えられた「国民外交」論の内実を明らかにする論文を執筆した。この論文では、1:国際協調主義を指支持した知識人たちが、基本的にエリートによる外交推進を主張していたこと、2:外交の民主化による大衆の外交参加に懐疑的であったこと、3:知識人の期待するどおりの国民は存在せず、結果的に外交の民主化に消極的になること、を論じた。 くわえて、1930年代の国際秩序論の変貌をさぐる手がかりとして、不戦条約に関する研究を開始した。 以上の活動により、残りの期間で解明する問題を、1:戦間期の国際協調主義の失速に対して知識人がどのような役割を果たしたのか、2:大東亜共栄圏の国際秩序論から再考するための基礎的研究の2点に定めることができた。
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