2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける国家と市民社会-地域統合のトラック別分析
Project/Area Number |
22730141
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大賀 哲 九州大学, 大学院・法学研究院, 准教授 (90445718)
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Keywords | 政治学 / 国際協力 / ASEAN / 地域主義 / 東アジア共同体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、東アジアの「地域主義」や「地域化」といった規範・言説が、国家だけではなく市民社会において如何に受容され、かかう地填主義秩序において国家と市民社会の関係がどのように位置付けられ得るのかを体系的に考察することである。本研究では、特にトラック別分析を採用し、国家主体としてのトラックI、政府と民間主体の混成組織としてのトラックII、純然たる民間主体としてのトラックIIIを区別し、北東アジア・東南アジア・東アジアのそれぞれにおける地域主義と地域化の認識規範の変容を考察するし、東アジア地域統合に通底する秩序「規範」を詳らかにすることである。このうち本研究年度では、(1)理論仮説と事例研究の統合によって理論の強化をはかる、(2)東南アジアにおけるネットワークNGOを調査し、史資料の収集と関係者へのインタビューを行なう、(3)これまでの調査結果をまとめ、国内外の学会で中間成果の報告を行い、学術誌への論文投稿も行う、の三点を目標としていた。(1)については既存の国際政治理論を援用しつつ、その限界を明らかにすることで本研究の着眼するトラック別分析について理論枠組みを構築することができた。(2)については継続的にタイ、シンガポールで現地調査を行ない、現地のシンクタンクやネットワークNGOの担当者からインタビューを行なった。(3)については、これまでの研究成果として、ソウルとシンガポールの国際会議で研究報告を行なった。この研究報告に関連した研究書が平成24年度中にニューヨーク州立大学出版会、シンガポール大学出版会から刊行されるが、申請者の研究成果が同書にそれぞれ所収されることになっている。研究目的との関連では、とりわけトラックIIIにおける地域主義規範を検討することで、地域主義が単なる国家主体の論理ではなく、市民社会の側にも共有されていること、トラックIとトラックIIIの地域主義論には一定の溝が存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、当初の予定通りに研究調査及び研究成果の公表作業が進捗している。とくに国際会議での発表と、それをもとにした研究所刊行のめどが立ったことは順調な成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、これまでのトラックIII関係者へのインタビューおよび各ネットワークNGOの内部文書の検討結果などを踏まえて、とくにトラックI・IIIの関係者へのインタビューを予定しており、そのためインドネシアとシンガポールへの出張を予定している。また、全体の研究成果を取りまとめるため、アジア研究の学会において研究発表を行なうことも予定している。同時にまた最終年度に向けて、本研究を取りまとめた単著作の刊行の準備を進める。
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Research Products
(2 results)