2010 Fiscal Year Annual Research Report
開戦前の対英米・対独ソ交渉と戦時期の戦後秩序形成過程にみる日本の対外戦略の究明
Project/Area Number |
22730144
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
武田 知己 大東文化大学, 法学部, 准教授 (20311897)
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Keywords | 日本外交 / 第二次世界大戦 / 国際秩序 / 戦略 / 外交交渉 |
Research Abstract |
満州事変から第二次大戦後にかけての日本の対外戦略の本質とその変化を、当時の多国間関係の中で明らかにすることが本研究の課題であるが、当該年度は、その前半期というべき1931年から1937年までを主たる対象として資料整理・解読を進めた。特に当該時期の日本の対中国戦略を解明するという目的については、その成果の一部を、2011年5月に「日本外務省の対外戦略の形成とその帰結1933-1938」(単行論文)として刊行する予定である。これは天羽英二関係資料などのほか、台湾およびアメリカでの調査の一部を利用したものである。二国間外交が積み重ねられていた「協和外交」期として知られるこの時期、外務省が、対外戦略それ自体としては一貫して多国間関係への広がりを持っていたこと、しかも同じ現象に相反する解釈が付与され、同じ対英米協調路線であっても、内部に深刻な齟齬が生じていたことなどを明らかにした。なお、台湾では、広田三原則を受けた中国側の対応が具体的にわかる一連の外交電報を閲覧し、それを本格的に利用した日中交渉の論文の執筆という新たな課題を得た。第二に、松本忠雄関係文書(首都大学東京図書情報センター所蔵)の整理も進み、30年代の南京総領事からの公電類の目録化を終了した。目録と公電の分析は、2011年度から『大東法学』に連載する形で公表していく予定である。第三に、政府レベルだけではなく、有識者層の国際政治観の調査も進んだ。特に、愛媛県松山市にある安倍能成関係文書の調査を通して、新しく戦時期の京都学派の動向に関する未公刊の書簡の調査は有益であった。2011年度には、現在入手している史料を用いて、研究成果の一部を公表したい。
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Research Products
(2 results)