2010 Fiscal Year Annual Research Report
公共財供給技術の普及についてのゲーム理論による考察
Project/Area Number |
22730155
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平井 俊行 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (00383951)
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Keywords | ゲーム理論 / 公共財 / 技術情報取引 |
Research Abstract |
公共財供給費用削減技術の技術情報保護制度の下での市場取引について分析をおこなった。そもそも、各国(主体)が費用削減技術を導入するメリットがあるかどうかは各国の選好だけでなく、各国がどのように公共財供給をおこなうかのルールにも依存する。各主体がいかなる選好を持っていても、費用削減技術の導入がメリットとなることを担保するような公共財供給ルールを既存研究から採用し、モデルを定式化した。このモデルにおける結論は、私的財と比較して公共財に対する選好の強さを表すパラメータに依存して変化する。このパラメータが大きければ、費用削減技術を導入している他の主体の数が多いほど費用削減技術に対する支払意志が高まり、小さければその逆となる。その結果、技術情報保護制度の下での費用削減技術の市場取引において、前者ではすべての主体が費用削減技術を導入し、技術開発者の収益も大きくなり得るが、後者では必ずしも費用削減技術が全主体に普及しえないことが明らかになった。 また、より基礎的な分析として、公共財供給費用削減技術を含む財の種類である排除可能公共財の価格付けについて分析をおこなった。一つの分割可能な排除可能公共財を含む経済と複数かつ非分割な排除可能公共財を含む経済のそれぞれにおいて、各提携が提携内で排除可能公共財への価格付けを用いて達成できる配分のみ達成可能であるような提携形ゲームとして定式化し、提携による逸脱を許さないような配分(コア)について分析した。前者については、非常に緩い条件の下でコアが非空となることを示した。また後者については、それぞれの排除可能公共財が互いに粗補完的である場合、コアは非空となり、価格引下げオークション(イングリッシュオークション)を用いることで、有限回のステップでコアに含まれる配分へ到達することを示した。
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