2011 Fiscal Year Annual Research Report
公共財供給技術の普及についてのゲーム理論による考察
Project/Area Number |
22730155
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平井 俊行 富山大学, 経済学部, 准教授 (00383951)
|
Keywords | 公共財 / ゲーム理論 / 技術情報取引 |
Research Abstract |
公共財供給技術の交渉を通じた(金銭支払を伴う)移転について、ゲーム理論と関連の深い社会状況の理論を用いて分析をおこなった.公共財供給技術を、ある主体による導入が(i)ほかの主体の利得を常に増加させるが、(ii)自分自身の利得を減少させる場合がある、という2つの特徴で記述し分析をおこなった.このような技術の移転を考えると、全主体への技術普及が社会的に最適な状態であったとしても、(ii)により移転を受け入れず、(i)によっておこるほかの主体による技術導入にただ乗りしてしまい全体への普及は必ずしも保証されない.実際、交渉という協力的な行動と、交渉からの離脱という非協力的な行動両方を組み込んだモデルにおいて、もし交渉が一度きりで終わってしまう場合は必ずしも全体への技術普及は達成されないことを示した.しかし、同じモデルにおいて再交渉が許されているならば、常に全主体への技術普及が達成されることが明らかになった.本研究課題の目的は公共財供給技術の普及が社会的に最適な場合達成されうるか、どうすれば達成できるのかを分析することである.今年度に得られた結果は、いくつかの課題を残すものの、前者については肯定的な結果であり、後者については再交渉の可能性が重要であることを明らかにした. また、より基礎的な研究として公共財経済における配分によって記述されるコアが通常の支配関係では外部安定性を満たさないが、それを弱めた間接支配の概念を用いることで外部安定性をみたすことを示し、論文"On the stability of the core in a public good economy"としてまとめた.(旧題: (Sophisticated) StableSets and Coresin Public Good Economies)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中核となる研究がほぼ終了し、論文執筆および報告・推敲を残すのみとなった.また、この研究において分析しきれなかった問題が残りの課題の一部と密接に関係することが明らかになり、今後の研究の方向性について見当がついた.また、この研究についての文献サーベイをおこなった際に残りの課題の分析として用いるために検討すべき参考文献が見つかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
公共財供給技術取引について、今年度の分析結果において全主体への普及が可能であることが明らかになった.今後は、その際の利益配分についての特に焦点をあてて分析をおこなう.また、非協力的な取引について非協力交渉ゲームの枠組の適用可能性について検討する.ほかの基礎的な理論の構築についても引き続き分析をすすめる.
|