2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730156
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
竹内 幹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50509148)
|
Keywords | 時間選好 / リスク選好 / 実験経済学 / 行動経済学 |
Research Abstract |
本研究は、タイミング(時間・時期)が重要となる経済的行為にあたって個人がどのような意思決定をするのかという問題について、行動経済学・実験経済学的なアプローチで調べている。その意思決定のモデルで重要な役割を果たすのが、時間選好という概念である。たとえば、貯蓄という経済的行為には、現在の消費をあきらめ、その代わり将来に備えるという動機がある。このような意思決定にあたって、現在と将来とを秤にかけるのが時間選好である。 より専門的には、本研究では、時間選好の推定にあたって非線形な利得関数(効用関数)を前提とすることで、時間割引関数の特性を詳しく調べている。研究代表者は、ノンパラメトリックな(特定の数式モデルに依存しない)時間選好の推定方法を考案・提唱しており、その推定方法の特長をいかして、時間割引関数が逆Sカーブになることを確認している。一部の研究結果は、すでに平成23年3月発行の『Games and Economic Behavior』に発表済みであり、それをうけ平成23年度では、より簡素な実験方法によって、時間割引関数の凹性(concavity)を直接観察することを試み、それに成功した。平成23年7月には一橋大学でのセミナーで、同12月には東京大学のセミナーで研究成果を発表し、同月に中国・厦門で開催された実験経済学会(Economic Science Association)のアジア太平洋大会でも学会発表を行った。これら発表で受けたコメントを考慮したうえで、論文を執筆し、Journal of Behavior Economics and Finance に投稿、受理された(平成24年に公刊)。このような形で時間割引関数の局所的な凹性を示せたことは、逆S字カーブとそれが意味する「未来バイアス」の傍証となる重要な結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度末におこなったパイロット実験について、その結果を分析し、論文にまとめて投稿することができた。ただし、平成23年度に実施予定であった実験は、その実験デザインを再検討するために、実施時期を平成24年度に変更した。それにともない謝金分の予算の繰越申請をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに終わったことではあるが、平成24年度は本研究課題の最終年度であるから、これまでに得られた知見を総括するための実験を行い、すみやかに研究論文を投稿することを目標とする。
|
Research Products
(1 results)