2011 Fiscal Year Annual Research Report
メカニズム・デザインにおける均衡調整問題:正直均衡は選択されるのか?
Project/Area Number |
22730160
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
水上 英貴 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (30377238)
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Keywords | 経済理論 / ゲーム理論 / メカニズム・デザイン / 行動メカニズム・デザイン / 遂行理論 |
Research Abstract |
遂行理論では,設計したメカニズムが複数個の均衡を持つとしても,それらの均衡アウトカムは必ずすべて社会目標と一致している.したがって,メカニズムが複数個の均衡を持つことは理論的には問題とされない.しかしながら,複数均衡を持つメカニズムを現実の制度に適用するとなると,どの均衡の達成を目指そうとするのかを人々の間で調整する必要があり,均衡調整問題が発生する.特に,最近現実に使われつつある直接表明メカニズムはシンプルなだけに複数均衡を持ちやすく,均衡調整問題を解決することは重要な課題となっている.本研究では,完備情報下での直接表明メカニズムにおける均衡調整問題の解決を目指し,直接表明メカニズムが複数個の均衡を持つときに,その一つに正直均衡を含む場合には正直均衡がフォーカル・ポイントになるかどうかを経済実験で検証する. 本研究では,正直均衡がフォーカル・ポイントになるかどうかを検証するために,複数均衡を持つ場合に正直均衡を含むメカニズムと全く含まないメカニズムを設計し,前者の方が高い均衡達成率を示すかどうかを統計的に検定する手法をとる.フォーカル・ポイントとなりうる均衡としてよく知られているものには,利得支配均衡とリスク支配均衡がある.このうち,社会目標の遂行可能性により,設計したメカニズムが複数個の均衡を持つ場合はそれらの均衡アウトカムは社会目標と一致していなければならないことから,利得支配均衡は存在しないことがわかる.したがって,本研究では,フォーカル・ポイントとなりうる均衡としては,正直均衡とリスク支配均衡の二つが挙げられる. 本年度は,リスク支配均衡が存在する場合においても,正直均衡がフォーカル・ポイントになるかどうかを検証するための経済実験のデザインを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に実施予定だった経済実験が,実施直前に実験のデザインに問題が見つかり実施できなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
2011 年度中に実施できなかった経済実験を実施し,その結果を統計分析し,正直均衡の存在によって均衡調整問題を解決できるのかどうかを検証する.なお,2011 年度の経済実験実施直前に見つかった問題はすでに解決されている.
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