2010 Fiscal Year Annual Research Report
実質為替レートとインフレに関する研究:財レベルの価格粘着性からのアプローチ
Project/Area Number |
22730166
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
敦賀 貴之 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (40511720)
|
Keywords | 実質為替レート / インフレーション / 価格粘着性 / 一物一価法則 / 金融政策 / 技術ショック / 情報の不完全性 |
Research Abstract |
当研究では、実質為替レートとインフレーションの変動を価格粘着性の経済モデルの観点から実証・理論的分析を行い、マクロ経済学的なインプリケーションを得るものである。具体的には、研究テーマは2つの部分で構成される。(1)金融政策がもたらす名目的なショックと生産技術の変動がもたらす実質的なショックに対し、個別の財・サービスの価格指数へのどのように波及するのかについての分析、(2)企業の設定する価格に価格粘着性や情報の不完全性がある場合の実質為替レートの決定メカニズムと実質為替レートのPersistenceやVolatilityの決定要因に関する分析、の2つである。 研究課題(1)では、一般にショックが及ぼす個別の財・サービス価格に対する波及効果は財・サービスに応じて大きく異なるが、この波及効果の違いが一般物価水準の予測に対してもつインプリケーションを分析する。また、財・サービスごとに異なる波及効果が財・サービスレベルの価格粘着性と、密接な関連をもっているのかどうかも検証したうえで、既存の粘着価格のマクロ経済モデルと整合的であるかどうかを、標準的な確率的動学的一般均衡モデル(Dynamic Stochastic General Equilibrium model : DSGE)の手法で検証する。さらに、既存の標準的経済モデルと整合的でない場合、既存の粘着価格のマクロ経済モデルをどのように拡張・変更することで波及効果と財・サービスの価格粘着性の間の関係をうまく説明できるのかを明らかにする。 研究課題(2)では、実質為替レートと企業の価格設定行動に関する情報の不完全性の問題について議論する。より具体的には、企業が金融政策の変更に関して、不完全な情報しか持ち合わせていない場合に、情報が完全な場合と比べて、実質為替レートのPersistenceやVolatilityがどのように異なるのかを明らかにする。
|