2011 Fiscal Year Annual Research Report
経済的状況におけるコミュニケーションの役割に関する実験、および理論研究
Project/Area Number |
22730168
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
山森 哲雄 高崎経済大学, 経済学部, 講師 (50552006)
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Keywords | コミュニケーション / 罪回避 / 経済学実験 |
Research Abstract |
本研究課題は、利害対立の状況においても人々がコミュニケーションによって互いの行動を調整することを実験的に明らかにし、その理論的根拠を提示することである。昨年度までの研究では、Battigalli, P.and Dufwenberg, M.(2007)が提示した罪回避の理論を修正することでこれまでの実験結果を説明することを試みた。罪回避の理論では、プレイヤーは相手プレイヤーの期待を裏切ることで罪の意識を感じるとされるが、罪の意識を感じるのは、その期待が妥当であった場合に限定するという修正を行ったのである。本年度は、独裁者ゲームを基にした次のような実験によって、期待の妥当性がどのようにして与えられるのかについて検証した。通常の独裁者ゲームと同様に、提案者がある一定金額のパイに関する配分を選択し、その選択がそのまま提案者と受容者の配分として確定するが、提案者は配分を選択する際に複数の情報を参照することができる。第一の情報は提案者の選択に対する受容者の期待、第二の情報は提案者の選択に対する受容者の評価、第三の情報は受容者が提案者となった場合の選択、そして第四の情報は他の提案者たちの選択に関する情報である。実験では、すべての情報を同時に被験者に与えることで、他の情報の効果を取り除いた各情報の純粋な効果と情報間の交互作用を抽出した。実験結果は、受容者の期待についてその主効果が検出されなかったものの、上記第三の情報との間に交互作用が検出された。また、他の情報との間には交互作用は検出されなかった。すなわち、提案者は利他的な行動を選択する受容者の期待を裏切らないように配分を選択するが、利己的な行動を選択する受容者の期待は無視したのである。この実験により、ある個人が他者の期待を裏切ることで罪の意識を感じるのはその期待が妥当であった場合に限ること、また、その妥当性は、期待の内容とそれを抱く他者の行動との整合性によって与えられることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)