2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本におけるマルクス主義文献の大衆的普及の様相
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22730169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保 誠二郎 東北大学, 大学院・経済学研究科, 博士研究員 (80400216)
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Keywords | マルクス主義 / レーニン / 大衆 / 普及史 / 受容史 / 戦前日本 / 大正・昭和初期 / 文献史 |
Research Abstract |
当該年度では、戦前におけるマルクス主義文献の大衆的な普及に関する基礎的な知見を得る目的の下に、主に次の資料を収集し、研究を実施した。 1、マルクス主義文献の読書案内の探索、2、マルクス主義の啓蒙的文献の探索、3、雑誌でのマルクス主義文献の広告の収集、4、新聞に現れたマルクス記事と広告の収集である。 1については著名なものを除く7点の文献を、2については約60点の文献をリストアップした。3については雑誌『我等』について広告を586点(延べの数)、4について東京朝日新聞で167点の記事(評論等含む)と104点の広告を収集した。 本研究においては、こうした従来ほとんど研究対象とされてこなかった文献(書誌情報)を広く収集することが研究の基盤であり、この点に力を注いだ。この探索により、諸種の書誌情報をデータベース化できたことは本研究の重要な成果である。次に、これによって下記の点を明らかに、または仮説的に把握するに至った。 1、1919年頃から始まり1927年~1931年頃に頂点を迎えるマルクス主義文献の刊行ブームを、年次ごとの刊行点数によって明らかにした(国会図書館所蔵に限る)。さらに1927年頃からレーニン文献もまた隆盛を迎えることも年次ごとの刊行点数によって明らかにした(同上)。 2、一般教養的な要素と運動体的な要素という二つの要素からマルクス主義の啓蒙的文献を捉えることができるという観点をもつに至った。 3、東京朝日新聞に現れたマルクス記事を追跡した。主題的に論じられているわけではないが、多くの記事にマルクスが現れており、一般社会での認知状況を知るうえで興昧深い資料であることが明らかになった。 4、マルクス主義文献の乱発的な刊行から、読書案内、マルクス・レーニン主義の受容による「教程」と称した文献の刊行へと、大衆的普及の段階的な変化を把握することができた。
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Research Products
(2 results)