2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730178
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
早川 和彦 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 准教授 (00508161)
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Keywords | 計量経済学 / パネルデータ |
Research Abstract |
本年度は大きく分けて3つの研究を行った。1つ目は昨年度から行っている動学的パネルモデルにおける初期値の影響の考察である。昨年度はデータの従属性が強いときの1階階差GMM推定量の漸近的性質が初期値の仮定によって大きく変わることを理論的に示し、モンテカルロ実験でその振る舞いを調べたが、今年度はそのような理論的結果が実際のデータを用いた分析でも起こることを実証分析を通じて確認した。 2つ目は動学的パネルモデルの最尤推定量の考察である。Hsiao,Pesaran and Tahmiscioglu(2002,Journal of Econometrics)はデータがi.i.d,であることを仮定して変換尤度推定量を提案しているが、この仮定をクロスセクションの不均一分散を許すように緩めた。理論的分析からは変換尤度推定量はクロスセクションの不均一分散がある場合でも一致性があることが分かり、また不均一分散に robustな標準誤差も提案した。モンテカルロ実験で変換尤度推定量と種々のGMM推定量を比較したところ、ほとんど全てのケースで変換尤度推定量の方がGMM推定量よりもパフォーマンスがいいことが分かった。 3つ目は誤差にinteractive fixed effectsがある場合のダイナミックパネルデータモデルの考察である。誤差項にinteractive fixed effectsがある場合、通常のGMM推定量は一致性を失ってしまうため、interactive fixed effectsに適切に処理する方法である。本研究ではprojectionmethodを用いてinteractivefixedeffectsと説明変数の相関を取り除いたモデルにG剛を適用する方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルの拡張、理論的考察、モンテカルロ実験による有限標本でのパフォーマンスの比較などが予定通り進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
パネル自己回帰モデルのラグ次数の選択は使用する推定量、検定統計量のパフォーマンスに強く依存するため、GMM推定量や最尤推定量など代表的な推定方法のパフォーマンスを詳しく調べる必要がある。推定量のパフォーマンスの比較はある程度行ったので、残りの期間で過剰識別制約検定等の検定統計量の性質を調べる予定である。
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