2010 Fiscal Year Annual Research Report
経済時系列分析手法の統計的推測とその応用に関する研究
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22730180
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧本 太郎 九州大学, 大学院・経済学研究院, 准教授 (70403996)
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Keywords | 偏因果性 / 時系列モデル |
Research Abstract |
本研究は,実証分析を行う際に有益な手法の開発,統一的に分析できかつ容易に実行可能なアルゴリズムの提供,経済分析への応用を目的とする.本年度は,偏因果性諸測度の推定アルゴリズムの開発を行った.偏因果性諸測度は各周波数における測度と全周波数における測度の両方で定義され,全周波数における測度は各周波数における測度に分解される.このような偏因果性諸測度の推定問題を考える際には,計算の途中でスペクトラム密度行列の分解が必要になる.いくつかの方法が提案されているが,ここではRozanov(1967)の方法を拡張したHosoya and Takimoto (2010)で提案されている分解アルゴリズムを用いて,第3系列によるフィードバック効果を考慮した一方向因果性,同時的相互性,結合性という三種類の偏因果性諸測度の点・区間推定を行うアルゴリズムを開発し,シミュレーションを行った.複雑な計算を効率よく実行するために,数値計算に関する文献調査を同時に行いながらアルゴリズムの開発を行っている.また,パラメータの漸近正規性に基づくWald統計量に基づいて偏因果性諸測度の検定手法の検討を行った.さらに,本アルゴリズムでは第3系列の存在を前提としない単純因果性諸測度も計算できるように組まれており,簡単な三変量時系列モデルを用いて,第3系列を考慮するかどうかが因果性諸測度の推定に与える影響についてのシミュレーションを行った.シミュレーション結果から,第3系列が存在する場合にその存在を考慮せずに因果性分析を行うと,推定される因果性測度に歪みを与える可能性があることが分かった.
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