2011 Fiscal Year Annual Research Report
構造計量モデリングによるサービス産業の生産性の計測
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22730183
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
小西 葉子 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (70432060)
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Keywords | サービス産業 / 生産性 / 需要ショック / 美容院 / モデリング |
Research Abstract |
本研究は非製造業の中でも特にサービス産業の生産技術の構造を明らかにし、計測することを目的としている。サービス産業の生産性は(1)データ(特に資本ストック)が十分に存在しない、(2)業種が多種多様なため既存のモデルの適用が妥当でない業種がある、という問題がある。本年度は昨年度の研究対象である美容業と比較して、より複雑な産業構造を持つ輸送業のサービスの構造を、理論モデル構築と実証研究により明らかにした。輸送業では、全国貨物純流動調査の輸送費用データに着目し、費用関数の特定化を行った。その際、運輸送業の技術は、輸送する製品によってその技術が異なり、それが荷主が支払う費用(金銭・時間)に反映されていると考える。本年度は、トラックによる道路輸送を対象に地域間貨物費用の決定要因に関する理論モデルを構築した。推定には、全国貨物純流動調査(物流センサス)の個々の輸送データと総合交通分析システム(NITAS)の経路最短距離、最短時間などを利用した。この結果を"Determinants of Transport Costs for Inter-regional Trade"として論文にまとめた(2012年3月)。また、サービス業には飲食業やITサービスのように製造業と似通った生産構造を持つ業種も存在する。それらに対応するために製造業で計測される生産性(TFP)から需要ショックや集積効果を識別し、より正確に生産技術を計測する手法を提案した。この結果は、"特化型と都市化型集積の生産性への影響:事業所データによる実証分析"として報告した(2012年3月)。さらに、来年度の研究対象である小売業については、Konishi and Nishiyama(2010)を参考に、顧客の購買行動と企業の生産技術に関する理論モデル構築を行っている。本年度は、顧客行動についてのデータ収集に着手し、来年度の実証分析へ向けての準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はサービス産業の生産性計測を目的として平成22年度からスタートしたが、22年度は対個人サービス業のための生産性計測の手法を開発した。23年度は、輸送サービスに関する手法の開発に着手し、輸送業の費用(運賃)決定の構造を明らかにした。同時に小売業のための理論モデル、製造業と類似したサービス業のための全要素生産性(TFP)の改良も行っており、複数のサービス業の生産性計測を実現している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、輸送業については、輸送業の費用関数から双対性を利用し、生産技術の特定化を行う。小売業については、理論モデルの仕上げと、顧客の購買履歴を利用した実証研究を行う。従来型生産性(TFP)についても、需要と供給の識別を理論、データ両面から行っていく。
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Research Products
(5 results)