2011 Fiscal Year Annual Research Report
下請契約オークションに関する実証分析および被験者実験
Project/Area Number |
22730186
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中林 純 大阪大学, 社会経済研究所, 講師 (30565792)
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Keywords | 調達入札 / 被験者実験 / 元請下請関係 |
Research Abstract |
本研究は,建設業や製造業など,政府の財・サービス等の主な調達先である産業において見られる下請重層構造の生産システムが,効率的な政府の入札・契約制度を設計するにあたっていかなる影響があるのか,[1]Nakabayashi(2009)の理論モデルで提示された定理を,1.オークションの構造推定による実証分析および2.被験者実験,の双方より検証した。 本研究における被験者実験分析では,実証データでは観察できない下請企業の行動を観察すし,モデルの整合性を検証した。 既存のオークションモデルが考慮していなかった多重構造の生産システムをモデルに組み入れ,その結果として得られる理論的命題を実際のデータ,さらには実験による被験者の行動によって実証した。これにより,経済学におけるオークション理論および契約理論の,特に調達入札に関する分析に幅を広げることが可能となった。同時に,そうした理論モデルをベースに行われるオークションの構造推定を用いた実証研究においても,競争が激しくなるにつれて下がっていく下請契約価格を考慮したうえでの真の意味での入札者(元請企業)のコストを正確に推計する手法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に完了する予定であったいくつかの研究内容が達成できなかったので,本年度に引き続き行うこととなった。 まず構造推定・実証分析については,構造推定モデルのプログラミングを行った。具体的にはC言語を用いたプログラムを作成し入札の分布を用いて元請業者のコストの推計を行うことができた。また,得られたコストの情報を入札者の数およびその他必要なパラメータを設定しつつ,ノンパラメトリック推定を用いてコストの分布を推計した。さらに,得られた分布を検定し,下請入札の存在が,元請業者のコストの分布にどのように影響を与えるのか検定した結果,有意な差がみられた。推計結果は論文にまとめ,米国専門雑誌に投稿し,有益なフィードバックを得た。 被験者実験に関しては筑波大学において合計3回行い,特定の被験者サンプルに依存することを避けたデータの収集ができた。加えて,元請入札者数や下請入札者数にバリエーションを加えた実験を行ったり,被験者の危険回避度を考慮した上でのデータ推計も行った。大阪大学社会経済研究所内において同様の実験をするための被験者実験プログラムの準備を整えた。とりあえず得られた結果を,筑波大学社会工学系の渡邊直樹准教授とともに論文にまとめ,IEEE学会の論文として刊行された。
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Strategy for Future Research Activity |
構造推計については,学会発表および専門雑誌からのフィードバックを踏まえ,推定モデルの修正を行う。とりわけ,データは元請入札者数が不均一であるために,それを有効にコントロールしつつ,下請入札の存在および競争性を識別することを目指す。また,土木学会等工学系の学会や,実務者を交えた会合等においても発表の場を得て,フィードバックおよび実務者からの視点を加えつつ,論文の内容を充実させていく予定である。また,理論モデルについても,より一般的な状況を受け付けるものへと発展させていく予定である。 被験者実験については,元請企業の入札戦略に下請企業となる被験者が影響を受けるかについて,再度チェックを行う必要があるので,追加実験を行う。また,近年の被験者実験研究は,サンプル数を多く備える傾向があることから,本研究においても一度の実験における被験者数も拡大しつつ数度の追加実験を行い,必要なサンプルを得る。また,上記のより一般化された理論モデルについても被験者実験を行い,理論の頑健性について確かめる。
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Research Products
(2 results)