2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730188
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒田 祥子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (50447588)
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Keywords | 労働供給 / 労働時間 / 余暇時間 / タイムユーズサーベイ |
Research Abstract |
本研究は、昨今、日本で問題となっている長時間労働に焦点をあて、日本人の時間配分に関する定量的な分析を行い、現代の日本の労働者が抱える問題を特に労働時間の観点から明らかにすることによって、日本が持続可能な成長を遂げるための望ましい政策含意を導出することを目的としている。初年度に当たる22年度は、「労働力調査」(総務省統計局)の個票データ(1986~2007年)を用いて、2000年代初頭に不況下にもかかわらず日本人の労働時間が増加したことを明らかにするとともに、その要因の特定化を試みた。2000年代初頭は長時間労働や過労問題が社会問題化した時期であり、本研究では長時間労働問題やワークライフバランス政策への含意を導出するうえでの判断材料となる基礎的・定量的な事実を提供するものである。さらに、日本人の労働時間が欧米に比べて相対的に長い理由を解明するために、職場の評価制度や管理方法、周りの環境等に個々人の労働供給行動がどの程度影響を受けるかを、独自のアンケート調査を実施し、分析を行った。その結果、労働時間は職場環境など外的な要因によって大きく左右されること、具体的には周りの同僚が余暇を楽しむ環境に置かれた人は、その本人も労働供給を有意に減少させ、余暇を増加させるというピア効果が観察されることを指摘した。この結果は、日本人の長時間労働の原因の一つに職場環境という外的要因が深く影響していることを示唆するものである。
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