2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22730188
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒田 祥子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (50447588)
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Keywords | 労働供給 / 労働時間 / タイムユーズサーベイ / 非正規 |
Research Abstract |
本研究は、昨今、日本で問題となっている長時間労働に焦点をあて、日本人の時間配分に関する定量的な分析を行い、現代の日本の労働者が抱える問題を特に労働時間の観点から明らかにすることによって、日本が持続可能な成長を遂げるための望ましい政策含意を導出することを目的としている。研究2年目に当たる23年度は、『社会生活基本調査』(厚生労働省)の個票データを用いて、日本人の深夜就業の実態を把握し、深夜化が進行した要因の特定化を行った。分析の結果、1990年代から2000年代にかけての日本では、日中に働く人の割合が低下する一方で、深夜や早朝の時間帯に働く人の割合が趨勢的に増加していることを指摘した。また、この傾向は、特に非正規雇用者に顕著に観察されることがわかった。 たとえば、非正規履用者の平日午前11時の就業率は1996年の69.1%から2006年には63.5%へと5.6%低下した一方、平日深夜0時の就業率は1996年の4.1%から2006年には8.4%へと、倍以上増加していることが観察された。さらに、非正規雇用者の場合、景気変動等に伴う労働時間の変化を調整した場合でも、深夜や早朝の就業率の上昇は変わらず観察されることも示された。こうした現象が生じた要因については、正規雇用者の平日の労働時間の長時間化による帰宅時闇の遅れが深夜の財・サービス需要を喚起し、非正規雇用の深夜就業が増加した可能性があることを提示した。これまでの労働時間に閾する先行研究は時間数に着目したものが大勢であった。本研究は、どの時間帯にどのような労働者が働いており、また昨今においていかなる変化が観察されるかといった、これまでほとんど着目されてこなかった角度からの分析を行うことにより、長時間労働問題やワークライフバランス政策への含意を導出するうえでの判断材料となる基礎的・定量的な事実を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は現時点で、当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点の研究の進捗は予定通り順調であり、研究計画の変更等は特に必要ないと考えている。最終年度に当たる24年度には、研究のさらなる蓄積を目指すとともに、これまで実施した研究成果を包括的にまとめる作業を行う予定である。
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Research Products
(6 results)