2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730191
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
齊藤 有希子 早稲田大学, アジア研究機構, 研究員 (50543815)
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Keywords | 企業集積 / マイクロ立地データ / 産業のライフサイクル / 企業の外部性 |
Research Abstract |
昨年度は、東京商工リサーチの約80万社企業のデータを用いて、集積特性と企業間の取引関係の分析を行った。前者はJournal of The Japanese International Economiesに掲載され、後者は一橋大学の企業・金融ネットワークのWorking Paperに掲載される。これらの研究では、距離の重要性について間接的に議論していたが、今年度の研究では、距離の重要性を直接観測することを行った。 まず、Duranton and Overman(2005)の集積指標の手法を応用し、集積要因として考えられる企業間の取引や知識波及がどの程度近くで行われているのかを計測し、距離の重要性を議論した。既存研究では、特許引用により知識波及における距離の重要性が議論されてきたが、集積の距離範囲より非常に大きく、集積要因と考える事は難しい。一方で、我々の研究で得られた企業間の取引関係の距離や特許出願の共同研究により測定した知識波及の距離は、集積の距離範囲に近く、集積要因として考えられうる。両研究とも、日本経済学会、応用地域学会にて報告した。 また、集積の効果として、工業統計のパネルデータを用いて、事業所の生産性へ与える影響を分析した。事業所のマイクロ立地データから、行政単位で集計された指標でなく、事業所ごとに異なる距離ベースの集積指標を確立して、産業特化と都市化の双方の集積指標と事業所の生産性の関係を産業ごとに求めた。産業を成長産業、衰退産業、ハイテク産業、労働集約産業、資本集約産業などに分類し、分析したところ、労働生産性においては、多くの産業で正の相関がある一方で、TFPとの関係においては、都市化の効果が働くが、産業特化の効果が働く産業は、衰退産業に限定されることが確認された。これらの結果は、産業や企業のライフサイクルにおける、クラスター政策などの政策のターゲットを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
政府統計である工業統計の分析データの入手の関係から、昨年度と今年度の計画の間で、多少前後したものもあるが、1年前にデータを入手してから、今年度までの計画はほぼ予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進方策として、集積による事業所の生産性への効果について、今年度行った回帰分析に加え、立地などのself-selectionなどの内生性を考慮した分析を行い、集積の効果の現れるメカニズムを解明する。また、工業統計のデータについては、長期パネルデータを入手できたため、今年度のように産業を成長産業や衰退産業などに分類するだけでなく、集積特性や集積効果の長期のダイナミクスを分析する。
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Research Products
(10 results)