2012 Fiscal Year Annual Research Report
情報通信技術の発展を考慮した我が国における流通システムの経済学的分析
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22730196
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松井 建二 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (20345474)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 流通 / 卸価格 / 寡占 / 振替価格 / 移転価格 |
Research Abstract |
本研究課題の3年目である平成24年度は交付申請書に基づき、経済学の論理を基礎として、我が国の流通システムを描写するためのモデル構築を継続した。 具体的には、企業が消費者に直接販売を行う際に設ける、直販流通チャネルの経済への影響を特に分析した。家庭においてインターネットが普及するに伴い、情報通信技術を用いた直販が重要な流通チャネルとして利用される機会が、我が国においても多くなっている。直販チャネルは、しばしば消費者に向けて差別化された財を販売するために利用されることがある。これに対し本研究では、全く同質な財を、小売店などを介した間接流通チャネルと、直接流通チャネルの2つで販売する場合であっても、直販チャネルを設けるためには固定費用がかかるにも関わらず、それを設けておくことが企業の利潤を増大させるという帰結を導くモデルを構築した。これは特定の市場において潜在的な参入企業が存在するとき、直販のシステムが実質的には参入障壁として機能する可能性があるためである。このモデルは実務的にも重要な示唆を与える。 この他、小売部門を垂直統合した企業内における実質的な卸価格である、振替価格に関する研究も行った。製造業者が流通チャネルの調整(coordination)を行う目的で振替価格を手段として用いるモデルは、これまでに多様なものが構築されている。本年度は原価基準振替価格設定の分析を行い、固定費に関する不確実性が存在する状況では、変動原価に基づく振替価格設定と、全部原価に基づく振替価格設定のいずれが企業にとって望ましいかを分析した。 以上の具体的な研究成果は「研究発表」に示しているが、本年度も研究の進展を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、流通システムに関する2本の単著論文が著名な国際学術誌に掲載され、加えて所属機関における英文によるディスカッションペーパーを単著で4本執筆した。また本研究課題は、24年度末で開始から3年が経過したことになるが、これまでに、国際学術誌に複数の研究論文が受理され、掲載が確定している。さらに流通・マーケティング分野で世界最大の国際学会で研究報告を行った。以上の客観的な研究成果から、「①当初の計画以上に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
他の項目において記している通り、本課題は計画に沿った研究の進展が見られている。したがって引き続き、我が国の流通システムの現状を明らかにするために、さらなる経済学の論理に基づいた数理的なモデル構築を行う。平成25年度が本研究課題の最終年度であるが、残りの期間で得られる成果はこれまでと同様に、全て英語を用いて論文を執筆し、著名な国際学会における研究報告とともに、査読付の国際学術誌への投稿・掲載を進め、内外へ向けた研究成果の発信を行う。
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Research Products
(3 results)