2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長江 亮 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特任研究員 (80468876)
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Keywords | 障害者雇用 / 労働需要 / 政策評価 / ワークライフバランス |
Research Abstract |
日本の障害者雇用施策は円滑に機能していない。この原因は障害者雇用に伴う企業負担にあると考えられる。しかし、障害者雇用と企業負担との関係を、財務データを使用したパネルデータで厳密に検証した研究は存在しない。本研究の目的は、障害者雇用に伴う企業負担の均等化がなされているか、障害者の雇用が促進されているかを、東京・大阪労働局管轄下にある企業の財務データを使用して、計量経済学的に厳密な形で明らかにし、日本の障害者雇用施策の政策評価を行うことである。 本年度は、(1)2003年に障害者雇用状況が偶発的に開示された企業のデータを使用して基本データベースの収集・構築を行い、一次的分析としてマーケットテストを行った。その結果、障害者雇用が難しいような業種では障害者雇用が企業利潤にマイナスの影響があることを明らかにした。さらに、DD法を使用して、障害者雇用状況開示による障害者雇用への影響を検証して、施策の罰則措置とされている企業名の公表では障害者雇用は促進されないことを明らかにした。 また、より良い施策考察のために(2)障害者雇用に有効と考えられるワークライフバランスには、コーポレートガバナンスが有効に機能していなくてはならないことを、女性雇用を例にして明らかにした。 来年度は、障害者雇用が企業負担をもたらすメカニズムを理論的に定式化し、それをもとに実証分析を行う。さらに今回得られた結果を精緻化し、雇用調整速度の検証といった別の方法でも確認することで、機能不全の理由が制度にあることを厳密な形で明らかにする。
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