2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境技術開発と環境政策の国際的なコーディネーションに関する理論研究
Project/Area Number |
22730210
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
服部 圭介 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (50411385)
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Keywords | 環境技術開発 / 環境政策 / 国際貿易 / タイミング・ゲーム |
Research Abstract |
平成22年度の研究成果として、Hattori(2010)とHattori and Kitamura(2011)の2本の研究論文を作成し、Working Paperとして公開・発行した。 Hattori(2010)では、環境政策の多国間によるコーディネーション(協調的政策決定)が、企業の環境技術開発インセンティブに及ぼす影響について理論的な考察を行った。国際市場での企業の競争を含む2国モデルにおいて、各国家の環境政策(数量規制と価格規制)の協調の有無の効果をそれぞれ考察した。結果として、限界環境被害が大きなケースでは、政策手段が数量規制である方が、価格規制である場合よりも、企業の環境技術開発インセンティブを高める効果があることが明らかになった。また、多国間での環境政策水準の協調は、短期的には厚生を高める効果があるが、企業の環境技術開発インセンティブを小さくしてしまう可能性があることが明らかとなった。この結果は、環境政策の多国間協調のメカニズムを考える際に、「技術革新を通じた長期的な効果」の重要性を示唆するものである。 また、Hattori and Kitamura (2011)では、戦略的環境政策の枠組みにておいて、各国家は環境政策(排出税)の設定についてリーダーとなるのかフォロワーとなるのかという内生的なタイミング決定の問題を考察した。結果として、環境被害の程度が大きな場合には、環境政策決定が同時手番ではなく交互手番になり得ること、また環境被害の程度が小さな国家の政府が、リーダーとなり得ることが示された。この結果は、従来の戦略的環境政策の理論分析のほとんどが、同時手番決定を前提に分析されていたことに対して一石を投じるものであり、重要な貢献であると考えられる。
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Research Products
(4 results)