2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730226
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宇南山 卓 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (20348840)
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Keywords | 定額給付金 / 児童手当 / 家計調査 / 消費 / ライフサイクル仮説 |
Research Abstract |
家計に対する補助金政策がマクロの消費を喚起する効果を持つかを検証することが、本研究課題の目的である。そのために、予期された所得変動が消費に影響を与えるかを分析し、日本における消費のライフサイクル仮説の成立をテストしている。 定額給付金については、総務省統計局が公表する「家計調査」のミクロデータを用いて定額給付金が消費に与えた影響を分析した。その結果、暫定的には、定額給付金が消費にほとんど影響を与えていないことが分かった。これは、アメリカにおける類似の事例における研究とは異なる結果である。今後は、内閣府が実施した「定額給付金に関連した消費等に関する調査」を使用して、同様の分析を行い、現在の結果の頑健性をチェックする。さらに、昨年度明らかにした家計調査における定額給付金の過少申告にどのように対応するかを検討する。 一方、児童手当については、過去の制度の沿革を根拠となる法律に基づき調査し、子供の生まれ年ごとの児童手当の累積受取額を推計し、それが家計の消費水準および貯蓄水準に与えた影響を分析した。その結果、児童手当の大部分は貯蓄され、消費されていないことが分かった。しかし、サンプルを所得水準も資産水準も低い「借入制約世帯」に限定すると、児童手当の支給が同時点の消費を増加させることが確認された。貯蓄された児童手当がどのように消費されるかについては今後の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間として4年のうち半分が経過した現在の時点で、すでに具体的な分析に取り組むことができている。さらに、分析の問題点も明らかになっており、残りの期間で目的を達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究計画に基づき、さらに分析の対象を広げるとともに、分析の問題点を解決する。具体的には、分析の対象を、狭義の補助金に限定せず、消費税の引き上げ前後の家計行動についても分析対象とする。また、定額給付金に関するアンケート調査を活用し、家計調査の過少申告への対応をする。
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