2010 Fiscal Year Annual Research Report
家計の消費動向と間接税制改革の再分配効果に関する研究
Project/Area Number |
22730228
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (90452482)
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Keywords | 限界税制改革 / 格差 / 再分配 |
Research Abstract |
本研究では、日本と韓国の「家計調査」データに基づき、現行の間接税体系の限界的な変化が、家計の消費動向や所得分配にどのような影響をもたらすかについての検証を行った。ここでは、消費税の十大品目に対する税率変更を中心とする税制改革に焦点をあてている。また、分析を行うにあたっては、Armad and Stern(1981)によって提唱されたMarginal commodity tax reformの手法を応用した。 分析では、財・サービスを一定の基準でいくつかの複数の品目に分類し、各品目における現行の間接税制の税率体系や上村(2005)に依拠しつつ、実効税率の算出を行った。また、線形支出体系モデル(LES)やDeaton and Muellbauer(1980)によるAlmost Demand System Model(AID System)などで定式化された家計需要関数の推定を行い、需要の価格弾力性、所得弾力性など分析の鍵となるパラメータを計量的に抽出している。このパラメータを得ることにより、Madden,D.(1992),Madden(1995),Ray(1999)などで検討されているように、各品目の税率の追加的な上昇が社会厚生に与える影響についてmaginal social costの計測をもとに推定することが可能となる。 け日韓ともに価格弾力性と分配特性にもとづいて「限界的な課税コスト(λ)」を計測した。課税コストが低い支出品目として「教育」、高い支出品目として「電気・水道光熱」などが挙げられる。「交通・通信」も他の品目と比較すると課税コストが高い。全般的に韓国の方が、価格弾力性が(絶対値で見て)小さくなるような品目への課税を行った場合、課税後の所得分配が格差拡大や貧困上昇の方向へ動きやすい傾向を持っており、「効率性」と「公平性」のトレード・オフとでも呼ぶべき状況が発生している点がデータから示唆された。
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