2011 Fiscal Year Annual Research Report
家計の消費動向と間接税制改革の再分配効果に関する研究
Project/Area Number |
22730228
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (90452482)
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Keywords | 間接税制改革 / 格差 / 貧困 |
Research Abstract |
本研究では、家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」の個票データを用いることにより、間接税制改革が各世帯グループの社会厚生に与える影響について、Armad and Stern (1981)によって提唱されたMarginal commodity tax reformの手法をもとに検証した。データの最新年である2003年の世帯支出をもとにした分析結果によると、有配偶世帯のグループにおいては、主に「交通・通信」、「水道光熱」「食品」において課税の社会的限界費用(λ)が高く、「教育」、「教養娯楽」などの品目でλが低いことがわかった。一方で、「有配偶、子ども無し」世帯や、「無配偶、親と同居」世帯では、「教育」「水道光熱」「食品」の課税コストが高く、「生活用品」、「教養娯楽」の課税コストが低い。また、「無配偶、親と同居」世帯では、「交通・通信」「食料」の課税コストが高く、「生活用品」、「水道光熱」の課税コストが低い。若年世帯の支出構造から概していえることは、「被服・履物」「交通・通信」の課税コストが高く、「生活用品」、「教育」の課税コストが低くなっているという点である。 推定結果から判断すると、若年世帯において、限界的な間接税制改革を実行する場合、「被服・履物」「交通・通信」関連の支出品目の税率を引き下げ、「生活用品」、「教育」の税率を引き上げる改革が、全体的に見れば、社会厚生にとって望ましい効果を与えるものと考えられる。また、現状の少子化問題を緩和する、という観点から間接税制体系を評価するのであれば、無配偶世帯よりも有配偶世帯に対する厚生を重点的に高める税率改革を選択する、という政策判断が有効とも考えられる。
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