2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730237
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
梶谷 真也 明星大学, 経済学部, 講師 (60510807)
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Keywords | 健康 / 社会保障 / 就業 |
Research Abstract |
本研究の目的は,健康格差と所得の不平等との関係について,(1)人々の健康度に不平等が観察されるか否かを確認したうえで,(2)社会(集団)全体での所得の不平等度が個人の健康に与える影響と,(3)他者との所得の相対的な差が個人の健康に与える影響とに分けて,それぞれの影響を計量的に明らかにすることである. このうち,平成22年度は(1)に関する分析を行った.具体的には,高齢層において健康度に差があるか否か(健康度に不平等が観察されるか否か)を確認し,その差が就労期に最も長く従事した職業(キャリアジョブ)の違いによって生じているのではないかという点について実証分析を行った.研究論文を作成する過程においては,大阪府立大学中之島キャンパスで開催された研究会等で報告し,得られたコメントをもとに研究論文の加筆・修正を行っている. 日本の高齢者を対象とした調査のマイクロデータを用いて分析した結果,キャリアジョブによって男性高齢者の主観的健康度に違いが生じていることを確認した.ただし,Kaplan-Meierの残存率推定値とパラメトリックなハザードモデルの推定結果より,客観的な健康指標として身体活動能力の水準と病気の罹患経験を分析に用いた場合,キャリアジョブがブルーカラー職であった男性ほど身体活動能力が早く低下するのに対して,事務・販売・サービス職であった男性ほど慢性的な病気を早くに発症していることが示された.これらの結果は,労働者に要求される負荷や環境が職業によって異なっているために,就労期の職業によって高齢期の健康状態に差が生じているということを示唆している.
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