2012 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害教育および障害者雇用政策に関する理論・実証分析
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22730244
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
坂本 徳仁 東京理科大学, 理工学部, 講師 (00513095)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 聴覚障害教育 / 障害者雇用政策 / ミクロ計量経済学 / 仮想市場評価法 |
Research Abstract |
二つの研究課題(1.聴覚障害教育に関する研究、2.障害者の就労上の課題に関する研究)を分析するために、平成24年度は以下の三つの研究計画を遂行した。 (1)ろう学校に通う聴覚障害児童の学力に関する計量分析:全国のろう学校で行われている教育方法や教員数、教育上の課題を明確にするために、ろう学校を対象にした郵送調査を行なう準備を進めた。この他、研究協力者の森悠子氏(日本学術振興会PD研究員)と協議の上で、文部科学省の「全国学力・学習状況調査」および「学校基本調査」の個票データを用いて、ろう学校に通う聴覚障害児童の学力の決定要因および各種教育法の有効性について検証する研究計画の準備をした。 (2)聴覚障害者の就労実態に関する聞き取り調査:聴覚障害者の就労実態に関する調査を行なうために、知人経由の聞き取り調査を行った。本調査については、統計的にあまり有用な知見が得られるものではないため、参考見解程度にとどめ、得られた情報は就労上の問題に関する他の研究に活かすこととした。 (3)障害者雇用政策に関する計量分析:研究協力者の藤井麻由氏(国立社会保障人口問題研究所研究員)および庄子康氏(北海道大学准教授)とともに、CVMのための質問紙を作成し、郵送調査を実施した。この他、DPIの公開している障害者雇用率に関する企業データを利用して、納付金が企業の障害者雇用に与える影響を回帰不連続デザイン(RDD)に基づく計量分析によって検証した。さらに、納付金の雇用効果の検証以外に、企業の障害者雇用と利潤率・生産性との関係について検証を進めることを目的として、総務省および経済産業省に「経済センサス 基礎調査」、「企業活動基本調査」の個票データの利用申請を行い、利用許可が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度中の研究達成度に関する自己評価を、以下の三つの研究計画各々について簡潔に説明する。 (1)ろう学校に通う聴覚障害児童の学力に関する計量分析:当初は全国のろう学校に対して在籍児童の学力を聴くことを検討していたが、学校側の理解が得られなかったため、ろう学校の教育方法や教員数、教育上の課題を質問するような様式に調査計画を変更した。その上で、研究協力者の森悠子氏と協議し、ろう学校に通う聴覚障害児童の学力の決定要因および各種教育法の有効性について信頼性の高い分析結果を得るため、文部科学省の「全国学力・学習状況調査」および「学校基本調査」の個票データを利用する研究計画に変更し、概ね順調に研究を進めている状況にある。 (2)聴覚障害者の就労実態に関する聞き取り調査:聴覚障害者の就労実態に関する調査を行なうために、知人経由の聞き取り調査を行った。本調査については時間が取られるわりに、統計的に有用な知見が得られるものではないため、参考見解程度にとどめることとし、他の研究計画に時間を多く配分することとした。 (3)障害者雇用政策に関する計量分析:研究協力者の藤井麻由氏(国立社会保障人口問題研究所研究員)および庄子康氏(北海道大学准教授)とともに、CVMのための質問紙を作成し、郵送調査を実施した。この他、DPIの公開している障害者雇用率に関する企業データを利用して、納付金が企業の障害者雇用に与える影響を回帰不連続デザイン(RDD)に基づく計量分析によって検証した。さらに、納付金の雇用効果の検証以外に、企業の障害者雇用と利潤率・生産性との関係について検証を進めることを目的として、総務省および経済産業省に「経済センサス 基礎調査」、「企業活動基本調査」の個票データの利用申請を行い、利用許可が認められた。本研究課題については、当初の計画以上に研究が進んでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
二つの研究課題(1.聴覚障害教育に関する研究、2.障害者の就労上の課題に関する研究)を分析するために、平成25年度は以下の三つの研究計画を遂行する。 (1)ろう学校に通う聴覚障害児童の学力に関する計量分析:全国のろう学校で行われている教育方法や教員数、教育上の課題を明確にするために、ろう学校を対象にした郵送調査を行なう。その上で、文部科学省の「全国学力・学習状況調査」および「学校基本調査」の個票データの利用申請を行い、これらの個票データを集計した上で、ろう学校に通う聴覚障害児童の学力の決定要因および各種教育法の有効性について計量分析を行なう。 (2)聴覚障害者の就労実態に関する聞き取り調査:聴覚障害者の就労実態に関する調査を行なうために、引き続き聞き取り調査を行う。相互の信頼関係を構築することを目的として平成25年度についても継続して調査を実施する。 (3)障害者雇用政策に関する計量分析:平成24年度に実施したCVMのための郵送調査で得られたデータを集計・整理し、企業の障害労働者の需要を推定する。その上で、障害者差別禁止法の導入の経済効果をシミュレーションする。この他、DPIの公開している障害者雇用率に関する企業データを利用して、納付金が企業の障害者雇用に与える影響を回帰不連続デザイン(RDD)に基づく計量分析によって検証する。分析の際には、総務省および経済産業省から利用を許可された「経済センサス 基礎調査」、「企業活動基本調査」の個票データを利用して、納付金の政策効果の他にも、企業の障害者雇用と利潤率・生産性との関係についても検証する。また、時間に余裕があるようならば、厚生労働省の「障害者雇用実態調査」の個票データの利用申請を行い、障害者年金と障害者の労働供給の関係を解明することを目的として、障害者年金が障害労働者の賃金所得に与える負の影響について検証する。
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