2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本のコーポレートガバナンスにおける機関投資家の役割に関する実証研究
Project/Area Number |
22730254
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
葉 聰明 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (20404858)
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Keywords | 買収 / ファンド / 企業価値 / プライベートエクイティ / LBO |
Research Abstract |
本研究では,ファンドによる日本企業の買収がどのように企業統治と価値に影響するのかについて実証的に分析することを目的とし,2000年から2007年までのファンドによる日本上場企業の買収60件を分析対象としている. 欧米ではファンドによる企業買収は,主に買収後の人員削減や資産売却により企業価値を高め,再上場や売却などにより利益を回収するというパターンが一般的である.日本の場合でも,買収後において経営陣の交代や人員削減,資産売却などが観察されている.また,確認できるケースでは,投資先のメインバンクが協力的であることが分かった.この意味では,ファンドが旧来のメインバンクの役割を果たしていることは確かである. しかし,欧米のモデルのように,企業価値を高め,再上場や売却などによる出口(EXIT)戦略がうまくいっているとは言えない。買収ケース60件の中,実際に買収成立したのは49件であり,さらにその中で,投資先企業の再上場(1件のみ)や売却などのEXITを果たしたものは21件のみで,一方2011年現在においてまだ投資中であるのは23件である(残りの5件はファンドが倒産した場合や,追跡の結果が不明の場合).また,投資先企業の業績変化について調べた結果,人件費や債権の圧縮効果が見られたが,収益率や効率性においては著しい改善は観察されなかった. 買収後の企業の業績効果についていくつか指摘したい点がある.(1)一般的に日本企業が買収に対し積極的ではない中,ファンドの買収に応じた企業は赤字企業などの場合が多い.(2)分析究対象期間のその後半においては、ファンドが多数組成されるようになり,数少ない質のいい物件を競う状況にあった.その結果,実際に選定された投資先企業は投資に値するものではないケースも否定できない.以上の要因は買収後の企業業績に響き,買収の価値向上効果につながらない可能性がある.
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