2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本のコーポレートガバナンスにおける機関投資家の役割に関する実証研究
Project/Area Number |
22730254
|
Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
葉 聰明 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (20404858)
|
Keywords | 株主提案 / 機関投資家 / 企業統治 / ファンド |
Research Abstract |
本研究課題の第2段階として日本の機関投資家による株主活動(Shareholder Activism)に関する研究を行った。一般的に機関投資家の株主活動は、温和的な協調型と衝突的な対決型に分けられるが、前者は対象企業の政策方針や経営行動に変革を促すことに有効であるのに対し、後者は効果がないという結果が先行研究で一致している。しかし、対象企業の長期的業績や長期的株価リターンに関しては、いずれの形式の株主活動も効果が見られないという結果になる。 本研究は日本企業に対する株主提案160件強を調べた。その内訳をみると、個人株主による提案ケースが多く、2000年代後半に入ってファンドなどの投資会社による提案ケースが目立つようになってきたことが分かった。提案の可決率は全体で9%しかなかったが、欧米のケースに比べそれほど変わっていないレベルである。提案内容は取締役の選解任、定款変更、事業政策変更、利益配分などに関すものであった。さらに、統計分析の結果、提案内容や提案可決にかかわらず、対象企業の提案後3年間において提案による業績への効果が見られなかったという結論になった。本研究の実証研究はほぼ欧米研究の結果に一致してしいる。ただし、日本の場合、ファンドなどによる提案は最近の10年以内増え始めたばかりなので、まだエビデンスを積み重ねる必要がある。また、株主提案という形式の株主活動は対象企業の業績改善に効果が見られないという結果について、いくつかの経験則的な、仮説的な理由が挙げられている。例えば、経営陣は株主対応に必要以上の経営資源を費やしすぎていることや、提案側のファンドマネジャー自身は経営に関する専門能力が不足していることなどがその例である。これらの解釈についてこれからの研究課題として調査が進められることを期待する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究プロジェクトとして研究課題を3段階に分け、達成が現実可能であるように研究内容と目標を事前に設定してあったので、2年目の今年もほぼ計画通りに進んでいた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の3年間研究プロジェクトの第3段階に入り、事前に設定してあった研究目標と研究方法にしたがい、先行文献やデータの収集・分析などを着実に実行する予定である。研究目標と方法の手順が明確的にかつ具体的に設定してあったので、問題なく研究を進められると予期する。
|