2011 Fiscal Year Annual Research Report
公立文化施設のファンドレイジングに関する実証的研究
Project/Area Number |
22730255
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
桑原 美香 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (90405069)
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Keywords | Network DEA / 都道府県立美術館 / 評価指標 / 地方財政 / 文化行政 |
Research Abstract |
本研究では、単独開催の美術展と企業との共催による美術展を比較することにより、モラルハザードが生じていないか理論的、実証的に分析を行った。具体的には、単独開催では、赤字部分を補助金などで補てんされることにより非効率な運営が行われ、共催の場合には、企業がWatch dog(監視機能)として働くことにより、運営効率が高まるのではないかと仮定した。プリンシパル=エージェントの枠組みにおいては、地方公共団体と協賛企業等をプリンシパル、公立美術館をエージェントとし、これをSFA(確率的フロンティア分析)を用いて実証分析を行ったところ、公的な補助金が美術展開催経費を押し上げる効果を持っており、効率的な運営にマイナスのインセンティブを与えていることが明らかとなった。一方で、民間企業からの協賛金が効率性に寄与することを明示的にすることはできなかった。その理由としてデータセットの未整備も挙げられるが、現在の企業協賛は節税目的に行われるため監視機能が働いていない可能性が挙げられた。本研究より、少なくとも地方公共団体は、前年度比で補助金の増減を決めるのではなく、費用最少のインセンティブを与えるような補助の仕組みを取り入れねばならないことが示された。 なお、民間企業からの調達資金が監視機能として働くかどうかという点については、さらなる研究を続けることとし、日本の民間文化施設やアジア企業等の寄付行動といった文化的相違についても研究に織り込むことで、現状を踏まえた研究へとつなげてゆく。
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Research Products
(2 results)