2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730256
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
宮崎 毅 明海大学, 経済学部, 准教授 (40458485)
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Keywords | 市町村合併 / 地方財政 / 住民投票 / スピルオーバー効果 |
Research Abstract |
諸外国では、2変量プロビットやマッチングの構造推計などを用いて合併の意思決定に関する推計が行われているが、本研究では、日本の市町村合併における住民投票のデータを用いて合併の意思決定に関する分析を行った。昨年度は200弱の市町村をサンプルとしたが、本年度は「合併デジタルアーカイブ」(総務省)に載っていない市町村のデータも収集し、約310の市町村をサンプルとした。分析の結果、合併による規模の経済が大きい市町村は合併を好むが、国からの使途の制限がない補助金(地方交付税)を多く受け取っている市町村は合併に意欲的ではないということがわかった。なお、日本では課税所得の中央値がデータベース化されておらず、課税所得の平均を代理変数としていたが、今年度市町村別所得階級別の課税所得に関するデータを用いて市町村別に課税所得の中央値を推計して、分析に用いた。今年度データベースを拡張することによって、サンプルセレクションや脱落変数によるバイアスの可能性が小さいより精緻な分析が可能となった。 理論研究では、合併のメリットとして外部性の内部化がモデル化されているが、外部性を内部化に関する実証研究はほとんどない。そこで、本研究で構築された住民投票のデータを用い、外部性を内部化するような市町村合併についての推計を試みた。まず、公共財需要関数の推計から合併によって削減され得る外部性の大きさを求め、その後合併によるスピルオーバー削減効果が合併のインセンティブに及ぼす影響を分析した。スピルオーバーの大きさを求める際、市町村間の距離をウェイトとする必要があり、2,400弱の市町村の市町村間の距離に関するデータを作成した。分析の結果、近隣の市町村とのスピルオーバーが大きい市町村は、それらの市町村との合併を選好するということがわかった。外部性を内部化するような合併に関する研究は行われておらず、本研究の結果は非常に重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データベースの作成と実証分析は比較的順調に進展しており、研究成果も審査有りの国際学会で発表しているが、まだ査読付き雑誌に掲載されておらず、研究の成果が外部に認められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
「日本の市町村合併による住民投票データを用いた合併の研究」は、審査有りの国際学会でも発表しており、国際的にも興味深い研究であると認知されていると思われる。そこで、本年度中に研究成果を雑誌論文として出版するために注力したい。 また、当初の予定には含まれていない「合併による外部性の内部化」に関する研究も、合併の住民投票データを用いることで可能となるため、当初の研究の派生研究として進めていきたい。この研究も、審査有りの国際学会で発表予定である。
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