2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730263
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川崎 健太郎 東洋大学, 経営学部, 准教授 (80366509)
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Keywords | 為替相場制度 / 通貨統合 / 最適通貨圏理論 / 単位根検定 / 共和分検定 |
Research Abstract |
平成22年度において構築した2つの計量アプローチである「M-TARモデルによる非対称単位根検定のサーベイランスツールへの応用」「一般化購買力平価モデルの非対称共和分分析への拡張」を用い、研究論文(1)"How does the regional monetary unit work as a surveillancet tool ?"および研究論文(2)"Does'the ASEAN plus three'countries come closer to OCA ?"を執筆した。両研究の目的は、「東アジアにおける共通通貨圏創設」の可能性を探ることであり、l)アジア地域において急速に進んだ経済統合により、東アジア諸国は最適通貨圏へと近づいたのか、という分析、2)この経済統合の進展は、アジア地域および日本経済にどう貢献しているか、またどのような意義をもたらしているかという分析、3)経済統合のさらなる進展によって、期待される通貨統合は、アジア経済および日本経済にどのような影響をもたらすのかという分析を、聴き取り調査及び最新の理論・実証的な経済学アプローチによって明らかにすることであった。研究論文(1)は、目的3)を念頭に行われ、ヨーロッパにおける単一通貨制度構築までに大きな役割を果たしたEMSやECU制度のアジアへの応用が念頭に置かれている。平成22年度に行った聴取の成果が生かされており、また後者の論文は様々な国内外の学会、ワークショップ、研究会において、多くの研究者との意見交換の中で得られたコメントを反映させたものとなっている。また研究論文(2)は、目的1)および2)を念頭に置かれたものである。この論文は、平成23年8月15~16日に米国カリフォルニア州・クラレモントで開催されたKorea and the World Economy10周年記念大会において報告し、また平成24年3月16~17日に米国ワシントン州・シアトルで開催されたChina and the World Economy第1回記念大会においても報告をおこなった。得られたコメントを元に改訂を進め、査読付洋雑誌へ現在投稿準備中である。また本研究は、経済産業研究所・バスケット通貨研究会内でも報告を行った。その結果、経済産業研究所の所内検討会(平成24年4月11日)において、ディスカッションペーパーとして刊行することが認められ、平成24年度中の刊行が決まった。また研究論文(1)は、同様に経済産業研究所・バスケット通貨研究会で報告を行い(平成23年9月23日)、得られたコメントに従って改訂作業中であり、平成24年6月27-28日にシンガポールで開催予定のAsia Pacific Economic Association会議にて報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はアジアにおける通貨統合についてイギリスをモデルとしたWren-Lewis(2003)に倣ったシナリオ分析を行う予定であったが、2010~2011年におけるヨーロッパ財政危機を鑑み、これらシナリオ分析の現実的な有効性に疑問を持つようになった。したがって、本研究から当該項目を排除する一方で、より現実的で実効性のあるアジア域内為替相場の安定化のためのサーベイランスツールの開発と、アジアが最適通貨圏であるかどうかの検証に特化することとなった。平成23年度は一般化購買力平価モデルの拡張に集中することができ、その成果を刊行するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
最適通貨圏理論のパネル共和分を用いた分析については、経済産業研究所バスケット通貨研究会において産業別物価データが構築されており、そのデータの完成を待って研究に取り組む予定である。
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