2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア圏における金融深化と経済成長:情報・制度・規範の実証分析
Project/Area Number |
22730264
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大熊 正哲 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (60507987)
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Keywords | 金融論 / 経済体制 / 経済発展 / 地域経済学 |
Research Abstract |
研究プロジェクト初年度にあたる本年度は,東アジア圏のなかでも特に中国をとりあげ,(1)「金融と成長」に関する先行研究の整理・展望と,(2)Rajan and Zingales (2003)において展開されている金融深化の「私的利益仮説」を中心に,移行期中国における金融部門の発展の政治経済学的要因について考察を行った。まず(1)で行った先行研究のサーベイからは,四大国有銀行が支配的地位を占める未発達な金融システムを抱えながら,非国有部門をエンジンとした驚異的な経済成長を続ける中国経済を分析する上では,インフォーマル金融の経済成長プロセスにおける役割をどのように評価するか,また金融部門の発展の程度を示す代理変数の理論的な適切性をいかに確保するかが重要な論点となっていることがわかった。こうした先行研究のサーベイをもとに(2)で行った予備的なパネル・データ分析の結果からは,銀行信用に対する需要を所与とした場合,経済の対外開放度が高い国内地域ほど非国有部門に配分される銀行信用の比率が高いなど,洗練された金融部門を有している可能性が明らかになった。また1990年代初頭に生じた「改革・開放」政策の都市偏重・中央集権化への変質が,少数利益集団の役割を増大させることで金融部門の発展における地域間格差を拡大させた可能性を示唆する結果も得られた。今後は速やかにこれらの研究成果をWorking Paper等の形式にとりまとめ,国内外での学会報告などを通じて分析のさらなる精緻化を図る予定である。特に1990年代初頭における「改革・開放」政策の変質が,どのようなメカニズムで金融部門の発展における地域間格差を生じさせたのかについて,具体的事例を検討しながら考察していく必要があると勘案している。
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