2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730276
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木庭 俊彦 九州大学, 附属図書館付設記録資料館, 助教 (10553464)
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Keywords | 交通史 / 石炭産業史 / 港湾荷役 / 機帆船 |
Research Abstract |
本研究課題にもとづいて分析をすすめていくためには、歴史資料の残存状況を把握し、それを幅広く収集する必要があった。したがって、以下のとおり本年度については調査内容が主たる実績であり、収集資料の分析と成果の公表については現在すすめている。 1.調査内容 本年度は、北海道大学附属図書館北方資料室、北海道開拓記念館、小樽総合博物館、国立国会図書館、国立公文書館つくば分館、東京大学経済学部資料室、海事図書館、財団法人三井文庫、直方石炭記念館、宮若市石炭記念館、火野葦平資料館にて調査を行った。主に集めた資料は、北海道炭硬汽船寄託資料、北炭札幌事務所寄託資料、「戦時日本船名録」、小樽新聞や北海タイムスなどの地方紙、火野葦平に関する資料群、「労力供給請負業調」などである。これらの一次・二次資料は、筑豊炭の積出港(若松)と北海道炭の積出港(小樽・室蘭)における積込の機械化とその影響、戦時期における機帆船の実態を検討するうえで貴重であり、本研究計画の達成が期待できる。 2.研究成果 本年度における資料調査の結果、1920年代半ばから30年代初頭の日本において、非効率・高コストな港湾荷役が石炭産業の発展を制約する輸送問題として顕在化したことが明確になった。今後、若松・小樽・室蘭において、三井鉱山、三井物産、三菱鉱業、北海道炭礦汽船が荷役の問題にどのように対応したのかという点を中心に分析作業をすすめていく。そこでは、炭鉱企業の対応が港湾荷役業界に与えた影響について考察していくことを課題とする。 他方で、戦時下の統制にともなう運輸構造の変化の前提として、戦時末期の機帆船による石炭輸送の状況と軍徴傭の実態を明らかにする必要がある。本年度においては、調査・資料収集の結果を踏まえて、昭和19年に日本陸軍の船舶管船部によって作成された「機帆船調査表」を基礎的なデータとして復刻した。 なお、本年度は資料調査とその整理・分析に時間を割かれたため、次年度以降に論文として研究成果を公表する予定である。
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