2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730276
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木庭 俊彦 九州大学, 附属図書館付設記録資料館, 助教 (10553464)
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Keywords | 石炭産業 / 港湾荷役 / 機帆船 |
Research Abstract |
両大戦間期の日本石炭産業において、港湾荷役の非効率性がその発展を阻害する問題として認識され、大手炭鉱企業は港湾荷役業界への関与を強化していった。 .三井物産、三菱鉱業、北海道炭礦汽船を事例にした場合、筑豊炭の積出港(若松港)と北海道炭の積出港(小樽・室蘭港)では、港湾荷役業界の基軸となっていた仲仕請負業にあたる中間機関を維持しようとする意図が観察された。また、若松港と室蘭港では、地場の仲仕請負業者が炭鉱企業側に積極的に取り込まれつつも、荷役業界内での存立基盤を固めていった様相がうかがえた(北海道炭については投稿中)。 その一方で、三池炭の積出港(三池港)に関しては、三井鉱山の専用港という性格が強いことから異なる動きがみられた。現在執筆中のため詳細は明らかにできないが、1920年代半ばにおいて、三井鉱山は取引関係にあった仲仕請負業者を整理し、仲仕を「直轄」化していったことだけを記しておく。三池港の事例は別途検討する必要があるが、本年度の分析の結果、戦間期の大手炭鉱企業による関与が港湾荷役業界のあり方を左右したことが明らかになった。 その後、戦時期の日本石炭産業では海上輸送力不足の解消が最大の課題となった。本年度においては、戦時期に関して予想を上回る膨大な資料を発掘したため、その一部(機帆船の統制会社に関する貴重な資料群)を今後の幅広い利用のために紹介・復刻する作業に従事した。それにょり、九州・山口炭の機帆船輸送計画を管理する西日本石炭輸送統制会社が、各地区の機帆船会社を吸収合併していくまでの紆余曲折の過程を一次資料から裏付けることができた。 本研究の結果、これまで戦前日本の構造的特質として把握されてきた港湾荷役業界における仲仕請負業者(親方)の存在、内航海運業界(特に機帆船海運業)における家族経営形態について、それらの業界のあり方がいかに再編されつつも存続したのかを理解することができるようになった。
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