Research Abstract |
平成23年度には,明治期における三井組東京両替店・大元方が所有していた町屋敷,および三菱合資会社の所有地に関する一次史料を素材として,東京における土地収益性について量的解析を図ることに務めた。とりわけ,本年度に力を入れたのは,(A)三井における東京所有地の資産利子率(ROA : Return on Assets)の推計,および(B)三菱合資会社地所課「収支証書」の入力作業の2点である。 (A)に関しては,地代データとして,三井文庫所蔵の(1)「目録精算簿」明治8~12年分(別2413~2417),(2)「明治13~14年上下半季目録精算表」(別2451),(3)「明治15~17年目録計算:調表」(別2387-1~5),(4)「地所家屋収支決算表」明治24年(別2387-8),地価データとして(5)「各所有地一覧帳」明治19年(別2366)をはじめとする史料から,200筆を超える三井組における東京所有地の純利益の土地購入価格に対する資産利子率(ROA : Return on Assets)を1筆ごとに求め,先行研究の分析結果と比較した。その結果,(1)徳川時代からの所有地に関しては,幕末・維新期におけるROAの連続性を確認することができ,(2)所有地全体の趨勢として,ROAは1870年代の上昇傾向にあったものの,1880年代には停滞する傾向を示していたことが明らかとなった。この結果,従来,森田貴子『近代土地制度と不動産経営』塙書房,2007年が唱えていた利回り:36~80%という数値は,明らかに過大評価されており,一般化することが困難だと反証することができた。以上の研究については,社会経済史学会関東部会(2011年7月9日開催,於早稲田大学)で報告を行い,現在執筆している段階にある。 (B)に関しては,東日本大震災の影響で,三菱史料館が一時的に休館を余儀なくされたため,史料収集を行う時期が年度末からとなってしまった。とはいうものの,1909(明治42)年1~2月分の「収支証書」の収集を修了することができた。同年3月分以降の史料収集,解析は1,平成24年度の課題としていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三菱の史料収集に関しては,東日本大震災の影響で寄託先の三菱史料館が休館していたため,遅延を余儀なくされているが,三井のものに関しては,震災前に収集できているので,おおむね順調に進展していると判断できる。
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