2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代都市の土地投資と不動産経営:三井・三菱における東京所有地の事例研究
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22730278
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鷲崎 俊太郎 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50306867)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 近世 / 近代 / 江戸 / 東京 / 土地市場 / 不動産経営 / 収益率 / 利子率 |
Research Abstract |
平成24年度には,「江戸の町屋敷経営と不動産収益率の長期分析:1775~1872 ―三井家両替店請40か所のケーススタディ―」を執筆し,『経済学研究』第79巻第4号(2012年12月)に投稿した。この論文では,三井家における江戸市中の土地集積過程を振り返りつつ,徳川後期における江戸町屋敷経営の収支構造と収益率を時系列で分析し,その意義を解明した。 すなわち,17世紀末期に両替商として発展を遂げた三井家は,幕府から御為替御用を引き受けたが,それにあたって膨大な土地を担保として供出しなければならなかったため,江戸町屋敷を精力的に買い付けた。その結果,三井家の不動産は18世紀初頭に総資産の46%を占め,18世紀末期でも貸付金に次ぐ重要な資産に位置していた。 このうち,両替店請40か所を事例とした町屋敷経営の収益率は,1770~90年代に4%前後で推移し,1800年代に入ると4.5%近くまで上昇した。18世紀前半期のそれが3~5%で推移していた点を踏まえると,連続的に推移していたといえる。しかし,1820年代から低下傾向を示し,幕末には2%前後まで半減した。以上より,19世紀前半期における江戸土地市場の低利局面を実証できた。 とりわけ,災害年の収益率は0.5%弱から1%台の水準にまで低迷していた。大火は通常の地主に対して計り知れない損害を与えるが,三井家の場合,御為替御用の引受である町屋敷の担保価値を維持する必要があった。そこで,大元方からの借入金を含めた収益率を推計すると,収益源を地主手取分に限定して計算したときのそれに近い水準にまで回復している様子が伺えた。したがって,遅くとも1850年代まで大元方が担保価値を維持すべく,町屋敷経営に資金を提供し,収益性を下支えしていた姿勢は,積極的な経営志向を示したという意味で評価に値すると主張できる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)