2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭ドイツにおける都市失業保険の展開―「社会都市」論の実証的研究―
Project/Area Number |
22730279
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
森 宜人 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (10401671)
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Keywords | 社会都市 / 失業保険 / ガン・システム / 介入的自由主義 / 社会国家 |
Research Abstract |
本研究は、近代ヨーロッパの「社会都市」の歴史的意義を実証的に考察する一環として、20世紀初頭ドイツにおける都市自治体による失業保険制度(ガン・システム)の導入プロセスとその政策思想上の背景、そして運用実態を実証的かつ総合的に明らかにすることを目的とする。特に分析上の重点を置くのは、ガン・システムが普及しえた社会的コンテクスト、ならびにその成果と限界である。この研究を通じて、現代の「社会国家」(「福祉国家」)の思想的起源となった「介入的自由主義」の生成過程を都市史の観点より照射することをめざす。 本年度は、まず、都市失業保険の導入が可能となった政策思想上の背景を明らかにするために、1911年に開催されたドイツ都市会議の議事録を翻訳・検証し、資料紹介として『経済系』(関東学院大学)に掲載した。これをふまえた上で、ベルリン圏を中心に個別都市の事例研究を進めた。特に都市失業保険の導入にあたって対照的な帰結が見られたシェーネベルクとシャルロッテンブルクの両都市の比較分析を行い、その成果の一部を2010年6月に開かれた社会経済史学会第79回全国大会において発表した。個別都市の事例研究と並行して、『ドイツ都市統計年報』をはじめとする同時代の行政報告書を手掛かりとして、都市失業保険の運用実態の全体像の把握につとめた。その分析結果に、ドイツ都市会議の議事録の検討を通じて明らかにした知見を加味し、2010年11月に開催された政治経済学・経済史学会秋季学術大会において、「都市と公共性」の観点から中間報告を行った。以上2件の口頭報告を論説として学術誌に掲載するとともに、研究の最終的な取りまとめを行うことが次年度の課題である。
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