2011 Fiscal Year Annual Research Report
海外研究開発拠点の企業内外における人的交流と研究成果の関係性
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22730286
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
林 正 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (50434270)
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Keywords | 経営学 / 国際経営 / 研究開発 / 人的交流 / 知識移転 / スピルオーバー |
Research Abstract |
平成23年度は、(1)米国特許商標庁に登録された各特許発明者の市町村単位での住所に対する緯度経度情報の特定、(2)各特許の共同発明者間、および特許間での引用を行った発明者間の地理的距離の計測と地政学的壌界の相違の確認、(3)情報通信企業における組織内と取引企業間での知識移転に関するヒアリング調査をそれぞれ進めてきた。まず、発明者の住所の地理情報に関しては、主に米国地質調査所の地名情報システム(GNIS)と国家地球空間情報局の地理名データベース(GNS)を用いて各国市町村に対する緯度経度を付与しようと試みた。アジア諸国に住所を持つ発明者を中心して、各行政区分での市町村の適切な緯度経度を容易に確認できないものには個別に緯度経度の特定を行わざるをえないため、膨大な労力と時間が必要とされた(平成23年度末の時点では1975年~2004年までに出願および承認された全米国特許の発明者の住所の約96%の緯度と経度を特定している)。また、東京都に本社を持つ情報通信企業において日本の本社と海外拠点および海外における取引企業間と本社との知識移転に関する促進および阻害要因についてヒアリング調査を行った。そこでは本研究における重要な概念の1つである知識移転に関して、(1)同一企業内においても国境を隔てた場合には本国内よりも知識移転が迅速に行われない傾向があること、(2)海外拠点と現地国企業との取引に本国本社が関与する場合、本国スタッフは現地企業との取引に関わる文脈の理解に欠けるために誤解が生じやすくなること、(3)米国特許に記載される技術分野について詳細な9桁分類を用いなければその意味は低下する可能性があることに関する示唆を得た。これらのことを踏まえ、発明者間の地理的、社会的、技術的な近接性の相互作用と知識移転の関係性に関する定量分析を行い、その結果をまとめたものを論文として作成し、日本における学会誌へ投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発明者の地理情報に関するデータベースの作成には、当初の予想を上回る多大な時間が必要とされたものの、2010年度と2011年度において大幅に進めることができた。また、文献調査やヒアリング調査も大きな問題に直面することなく継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2012年3月までに構築してきたデータベース、およびヒアリング調査と文献調査から得られた知見を用いて仮説検証を目的とする定量分析を実施し、それらをまとめた研究成果を論文および学会での発表を通じて公表することを計画している。
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