Research Abstract |
本研究の目的は,日本企業と個人との関わり合いが,時間の経過とともにどのように変化するのか,ということを経験的に明らかにすることであった。平成22年度において,第1次質問票調査(実施済)の量的データ分析(平成22年度前半),第1次インタビュー調査(平成22年度前半),2次質問票調査の準備・実施(平成22年度後半)をおこなってきた。平成23年度は,「第2次調査の量的データ分析」「第2次インタビュー調査」および「第3次質問票調査の準備実施」を実施した。具体的には,「勤続年数」「職位」「転職経験」「職種」その他の要因が組織コミットメントや心理的契約に対してどのような影響を与えるのかということを統計的に分析するとともに,そうした要因が組織コミットメント矢心理的契約に影響を与えるメカニズムの探求を行った。これらは,過年度におけるに分析結果の頑健性を確認するとともに,新たに導入された変数が関わり合いに対して与える影響を検討することを主たる目的としている。さらに,平成23年度においては,最後に,第1次質問票調査,第2次質問票調査,そして第3次質問票調査によって得られたデータの分析結果,およびこれまでの分析によって得られた結果を踏まえて,研究成果を英語および日本語論文としてまとめた。 上記の一連の研究を通じて,いくつかの重要な発見事実を得ることができた。まず,平成22年度の研究において発見された「時間の経過とともに,組織に対する愛着(コミットメント)」と組織と個人の相互期待(心理的契約)はともに逓減する」という事実を改めて確認することができた。そして,そうした組織と個人の関係性の「劣化」は,配置転換や昇進,転職といった,キャリア上の転機を経験することによって抑制することができることも分かった。
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