2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730294
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小沢 貴史 大阪市立大学, 大学院・創造都市研究科, 准教授 (50367132)
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Keywords | 焼酎市場 / 清酒市場 / 好況から不況へのシフトによる過剰在庫の活用 / 積極的な貯蔵酒生産 / 経済酒の相次ぐ投入 / 嗜好の変化への対応 / 製品のカップ化 / 多角化戦略の逆機能 |
Research Abstract |
本研究は、市場の進化過程において、需要の伸びが停滞/衰退した状態から、再び成長の軌道に乗る再活性化現象に注目している。また、その対照群として、進化過程の大半が需要の停滞/衰退傾向にある衰退化現象にも注目する。特に1985年から2006年にかけて、焼酎市場が再活性化を果たす一方で、清酒市場が衰退の一途を辿り、ついには市場規模が逆転したプロセスに迫った。各市場について、公刊データや新聞・雑誌記事などから、「その時、何が起こったのか」を追跡する中で、再活性化と衰退化の要因の特定化を図った。そして再活性化を遂げることができるか否かを大きく分けるポイントについて論点を整理した。 焼酎市場の再活性化においては、新規参入業者が既存の体系を破壊するようなイノベーションを導入することで、競争のルールが転換したわけではなかった。また焼酎市場と清酒市場では、残存者利益を獲得するべく、大手を中心とした少数企業のみが生存し続け、競合他社の撤退を促しているというわけではなかった。1985年の時点で多量の過剰在庫を生み出していた焼酎市場では、大手の在来企業は巨大な生産能力をベースとして、他の在来企業群では過剰在庫分をベースとして、積極的な貯蔵酒生産を行い、1991年以降の再活性化を牽引していった。 焼酎市場と清酒市場の在来企業群は、食生活の洋風化や、若い消費者層の酒類に対する好みが甘くてアルコール度数が低めのものに移行していることを、共通しで認識していた。しかし嗜好の変化への対応が各々で異なっていたため、再活性化と衰退化という結末を大きく分けることとなった。清酒市場では、100社近くの在来企業群が若い消費者層に向けて、嗜好の変化に対応した製品づくりではなく、清酒を気軽に試してもらうべく、こぞって清酒をカップにつめて販売するようになった。ところが、清酒市場全体の衰退を食い止めることすらできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に基づいて研究を遂行するとともに、学会などで発表を行ってきた。しかし発表の聴衆より、市場規模が逆転したプロセスにについて、公刊データや新聞・雑誌記事などから、「その時、何が起こったのか」を追跡することの学術的意義に疑念の声が上がった。そこで、当初の研究の計画の見直しを図り、内容分析やヒストリカル・エスノグラフィーの修得と採用を現在は推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「経済産業省経済産業政策局調査統計部編、工業統計表品目編」によって公刊された出荷データ(金額ベース)に基づき、衰退市場の生起実態に関する分析の精度を上げていきたい。それとともに、抽出された衰退市場、及び対照群としての再活性化市場について、その動態を、公刊データや新聞・雑誌記事を活用した内容分析やヒストリカル・エスノグラフィーを試みることで、単なるプロセスのドキュメンテーションに終始しない接近を行っていきたい。このような作業を、研究期間の残り2年間に費やしたいと考えている。
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Research Products
(2 results)