2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730294
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小沢 貴史 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (50367132)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 衰退市場 / 対照群 / 最大値更新率 / 出荷水準倍率 / 再活性化市場 / 構造変化 / 国産製品の市場 / 超長期 |
Research Abstract |
2012年度は、日本の国産製品に関する市場の推移を、超長期に渡って追跡してきた。「経済産業省経済産業政策局調査統計部 編、工業統計表 品目編」に所収されている出荷データから、市場の推移を追跡することで、大半が需要の衰退傾向にある衰退市場の実態を探ってきた。この活動は、本研究の初年度に行い、学会活動などの場で批判を受け、完遂していないものであった。しかし昨年度の事例調査の結果などを踏まえると、やはり時系列でみて継続的に収集可能な全製品市場を分析対象として、衰退市場の生起実態に関する分析を網羅的に行う必要性を痛感したので、取り組む事とした。 本研究では、衰退化とその対照群を判定する為の条件として、2つを用いた。 1つは、最大値更新率である。分析対象となる期間(1970年~2009年)内において、これまでの最高記録を上回った年だけ市場の成長が実現したとみなし、市場の成長が実現した部分だけを時間軸上に投影し、分析対象となる期間全体に占める割合を算出したものである。もう1つは、出荷水準倍率である。分析対象期間を、「前半」と「後半」に分けて、それぞれの期間における平均出荷金額の比率を尺度とするものである。 本研究では、最大値更新率と出荷水準倍率を測定できるよう、出荷データを加工し、その双方で低いという結果になった市場は、衰退市場であると判定した。分析対象とした業種は、飲料・たばこ・飼料、木材・木製品、家具・装備品、石油・石炭製品であった。2013年度は、その対象となる業種を更に広げるとともに、衰退化メカニズムを解明する仮説の導出を図りたい。 業種別でみると、木材・木製品業界では、8割以上が衰退市場と判定された。また家具・装備品業界では、概ね成長軌道にある市場が見受けられないことが分かった。その一方で、飲料・たばこ・飼料業界は、33.3%の製品市場が概ね成長軌道にあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出荷データの加工と分析だけにとどまらず、衰退市場と対照群で、何が起こったのか、タテとヨコの相互作用の連動という観点から、新聞・雑誌記事の内容分析や、市場動向のデータの収集/分析を並行して行っている為。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行ってきた、日本の国産製品に関する市場の判定作業を継続させるとともに、衰退市場について、業種別や衰退の生じている年代別、衰退率の推移などで見た特徴を探る。また、好不況による衰退状況の違いも比較・分析する。 そして、衰退市場のいくつか(衰退化の程度が著しいもの、需要の停滞・衰退傾向が長期化しているものなど、4つ程度)を事例として取り上げ、当該市場に関する公刊データの分析により、衰退化の要因を特定し、衰退化メカニズム解明の仮説を導出する。事例として取り上げた衰退市場に関する動向や企業行動、統計などの公刊データをはじめ、新聞や雑誌の記事を広く集め、市場の衰退化メカニズムに関する密な記述を図る。 続いて衰退化を遂げてしまった市場と、衰退化を免れる事が出来た市場を分けるポイントはどこにあったのかについて考察する。市場の成長に関する論理を導出し、市場の命運を分けるポイントをより明確に浮き上がらせる。売り手である企業群が何年くらい懲りずに・諦めずに顧客と向き合い続ければ再成長に転じることができるのか、競合他社がどのような行動に出れば再活性化につながるのか、および衰退市場からの転地の見極めをどのように行うべきか、などについて議論・考察する。 これまでの結果をもとに、市場の衰退化に結び付くような「避けるべきこと」を明確にすることで、衰退市場に参入している企業群が、どのように行動することで衰退化を凌ぐべきか、衰退から再活性化に転換させるべきか、あるいは衰退化を未然に防ぐべきか、その戦略展開のあり方を提案する。そして業界特有の要因に左右されにくい、市場再活性化の本質に迫りたい。最後に今後の課題を明らかにし、次なる研究課題へとつなげる。
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Research Products
(1 results)