Research Abstract |
平成23年度では,中国における電動自転車産業を研究事例に取り上げ,当該産業の発展プロセスの実態を明らかにすべく,中国の現地での取材調査および情報・資料収集を中心に研究活動を進めていた。結果的に,以下の調査・研究の実績を収めた。第一に,二次情報・資料の収集については,中国国内で公表され,かつ中国の電動自転車産業の発展に関連する新聞記事,雑誌論文等を数百点集めることができ,その分析を通じて,中国における電動自転車産業の業界勢力分布,電動自転車の種類と使用されるバッテリーの種類,市場動向と消費者層の実態,およびその発展プロセスにある制度的な問題等を明らかにすることができた。第二に,中国の電動自転車産業を代表する3地域(浙江,江蘇,天津)を訪問し,3地域の業界団体である天津市自転車電動自転車行業協会,江蘇省自転車電動自転車行業協会,漸江省自転車電動自転車協会の関係者を対象に,各々の地域における電動自転車産業の発展経緯,地域固有の強み,実際の産業規模等に関する質問項目を中心にインタビュー調査を実施した。その中でとくに,天津市自転車電動自転車行業協会と天津市興輪生産力促進有限公司から全面的な支援が得られ,今後の研究を進めるに当たっての研究協力の土台を築くことができた。第三に,現地での取材調査と情報・資料収集を傍らに,イノベーション・システムに関する文献研究を進め,中国の電動自転車産業を解釈する理論的フレームワーク(市場の多様性,制度の不健全性,技術の特性,企業の知識体系とイノベーションのパフォーマンスの関係を示す概念モデル)の可能性の検討をこころみ,その検討結果を「イノベーション・システムの概念モデルに関する予備的考察」という題目に,2012年2月に刊行された『産業技術大学院大学紀要』(第5号,pp.159-164)にて公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の現地取材調査と情報・資料収集の研究成果と,現地における研究協力ベースの構築に鑑み,今後,中国の電動自転車産業の代表地域である天津市を中心に,天津市自転車電動自転車行業協会および天津市興輪生産力促進有限公司の協力のもと,実証研究を完結させ,本研究の目的達成を目指していく。
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